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オール水性塗料で安全性・環境性を向上させる

首都高速 鋼橋塗装設計施工要領改訂の詳細について聞く

首都高速道路
技術部長

大塚 敬三

公開日:2019.08.30

小規模塗り替えに超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料を採用
 1㎡以下の小面積が対象 1回で1,000μm塗布可能

 ――超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料の採用について
 大塚 元々、前回の要領には参考資料として入っていましたが、今回は要領の中に標準塗料として位置づけました。
 対象は、1㎡以下の小面積のタッチアップや補修塗装です。同塗料は1,000μmの超厚膜を2工程で塗装することができます。主材である無溶剤系のエポキシ樹脂(『ブラッシャブルS』)がほぼ全厚で、その上にトップコートとしてふっ素樹脂やポリウレタン樹脂塗装を施します。
 トップコートの塗装は、主材塗布後、最短10分で施工でき、高所足場などで迅速に施工できることが特徴です。


小面積塗装仕様(Ⅲ-25)

小面積塗装の施工(ブラッシャブルSを塗布) (井手迫瑞樹撮影)

無機塗料による塗替えの要領は次期改訂の課題
  試験方法の確認が必要

 ――首都高速では一部で無機塗料による塗り替え塗装も採用していますが、今後はどのように考えていますか
 大塚  次の要領改訂における大きなテーマです。首都高速としての設計施工要領をきちんと作っていかなければいけないと考えています。
 ――要領化にあたっての課題は
 大塚  無機塗料は様々な製品がありますが、当社の求める要求性能に合致させるため、その確認試験方法を定める必要があります。前回要領から引き続いて試験方法の案は入っているのですが、これで本当に良いのかきちんと詰めていく必要があります。
 ――無機塗装は施工者の技量に拠るところが大きく、施工体制がしっかりしていないと、品質が安定しません。そこはどう考えていますか
 大塚 そこまではまだ考えていません。ただし、施工者の技量によらず、ある程度の品質が確保できるような材料が必要であると考えています。
 ――南平台で試験施工していたWJによるブラストはどのように考えていますか。首都高速では鶴見つばさ橋の主塔で採用した例がありますが
 大塚  試験的に施工した箇所はありますが、後方設備のスペースがブラスト以上に必要であるという点、またアンカーパターンが作れない点等の課題があります。湿式環境下で施工できるというメリットはありますが、今のところ循環式ブラストの方が優位性があると考えています。

防水塗装は約40kmの施工実績
 壁高欄に自動で防水塗料を吹き付ける機械も出現

 ――コンクリート高欄部などに用いる防水塗装に対する適用の効果や、施工性の向上については
 大塚  前回の要領改訂で「防水塗装」という定義を定めたことにより、壁高欄天端・側面、根巻コンクリート、橋梁天端などで急速に採用が進んでいます。首都高自体が防水塗装の品質向上や施工性の向上を進めているわけではありませんが、防水メーカーに加えて、塗料メーカーの参入が進んだため、塗布回数が少ない塗料などの開発が進み、施工性が改善されています。また、作業効率や品質を改善するために壁高欄に自動で防水塗料を吹き付ける施工機械が開発されたことから、一部の現場ではこれを用いて施工を進めています。


防水塗装の要求品質(Ⅴ-73)

防水塗装の範囲


防水塗装の施工対象(Ⅱ-22)

壁高欄上の既設塗膜を効率的に除去できるミストJET工法

壁高欄に自動で防水塗料を吹き付ける施工機械/吹付が完了した壁高欄

 ――防水塗装の施工実績は
 大塚 壁高欄を中心に防水塗装の施工を進めていて、2019年8月現在で、壁高欄延長で約40kmの施工実績があります。

道示改訂に対応し、橋梁構造物設計施工要領を改訂

 ――平成29年度道示改定を反映した技術基準の改訂について
 大塚  道示改定を反映し、3月に橋梁構造物設計施工要領のうち、共通編、鋼橋・鋼部材編、下部構造編を改定しました。耐震設計編は、一部の地域に集中して建設されている高架橋が主体の首都高速道路において、緊急輸送路としての機能確保を確実に果たすため、既設橋の耐震性確保の手法について検討しており、それらを反映して2019年内に改訂することを目指しています。 当社では荷重の偏心が大きい逆L型橋脚や他の管理者の構造物と一体となった橋脚もありますので、そうしたものも考慮に入れて改訂したいと考えています。
 その一方で、一部の附属物については現場の混乱を避けるために、橋梁本体の設計で部分係数法が定着するまでは許容応力度法を採用する方針としています。
 ――ありがとうございました
(2019年8月30日掲載)

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