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橋梁3456橋とトンネル94箇所を管理

北陸地方整備局 難工事が多いトンネル掘進、橋梁では塩害対策事業が進む

国土交通省
北陸地方整備局
道路部長

岩見 吉輝

公開日:2019.06.16

ブロック版では全国初となる「道路メンテナンス年報北陸版」を公表
 今年10月には「第3回北陸橋梁保全会議」を開催予定

 ――保全について。まず、北陸地方整備局独自の取り組みがありましたら教えてください
 岩見 老朽化の現状を広く国民の皆様はもちろん、道路管理者自らが知って理解をすることが重要と考えています。そこで今年1月に、「道路メンテナンス年報北陸版」を作成して、ブロック版としては全国で初めて公表しました。管内(新潟県、富山県、石川県)の橋梁、トンネルなどについて、国、県、市町村、高速道路会社による2017年度までの4年間の点検実施状況や、損傷の状況、措置状況などをとりまとめたものです。
 今年10月には「第3回北陸橋梁保全会議」の開催を予定しています。塩害などの橋梁保全に関する蓄積した技術・技能の伝承・研鑽を図るとともに、新技術の開発と、より一層の品質確保・信頼性向上を目指し、優れた橋梁保全技術の次世代への継承、情報共有を目的とした会議です。当整備局が全国で唯一、2013年度から3年に1回開催しており、産学官が一堂に会します。
 今回は、定期点検が一巡したことから、本格的な老朽化対策と修繕等の着実な実施を目指して、テーマを「セカンドステージに向けた橋梁保全とi-Construction」としました。基調講演、パネルディスカッション、報文発表、技術紹介など、盛りだくさんの内容を計画していますので、多くの方々に参加いただきたいと思っています。

橋梁3,456橋とトンネル94箇所を管理
 架設後50年を超える橋梁は20年後には56%まで急増

 ――管内の橋梁の内訳は
 岩見 当整備局では3,456橋を管理しています(平成29年度末時点)。そのうち、溝橋が1,755橋(51%)、鋼橋が449橋(13%)、PC橋が838橋(24%)、RC橋が414橋(12%)となっています。延長別では、15m未満が2,405橋と全体の約7割を占め、15~50m未満が540橋(16%)、50~100m未満が198橋(6%)、100m以上の長大橋が313橋(9%)です。管理橋梁のうち、最も長い橋梁は日本海東北自動車道の神林高架橋(新潟県村上市)で1451.3mあります。一般国道では、国道8号の長岡大橋(新潟県長岡市)が最長で1,078.2mです。


橋種別橋梁数

延長別橋梁数

 架設後経過年数別では、10年以下が273橋(8%)、11~20年以下が627橋(18%)、21~30年以下が533橋(15%)、31~40年以下が672橋(19%)、41~50年以下が674橋(20%)、51年以上が486橋(14%)、不明191橋(6%)となっています。架設後50年を超える橋梁は現在14%ですが、10年後には36%、20年後には56%まで急増します。
 路線別では、国道8号が1,615橋(47%)と最も多く、次いで国道7号345橋(10%)、国道17号256橋(7%)となっています。国道8号は北陸を縦断する延長380.433kmの道路で、全管理延長に占める割合では35%ですが、橋梁数割合では47%と高くなっています。これは谷筋を結んでいることから橋梁数が多くなっていると考えています。


供用年次別橋梁数

路線別橋梁数

 ――トンネルの内訳は
 岩見 94箇所を管理していて、延長別では、100~500m未満が52箇所(55%)と最も多く、500~1,000m未満が23箇所(24%)、1,000~3,000m未満が11箇所(12%)、100m未満が8箇所(9%)となっています。最長のトンネルは国道49号の赤岩トンネル(新潟県阿賀町)で2,661mです。
 工種別では、NATM工法が43箇所(46%)と最も多く、矢板工法が29箇所(31%)、その他工法が22箇所(23%)です。建設後50年を超えるトンネルは現在23%ですが、10年後には38%、20年後には49%に達します。
 路線別では、国道8号が24箇所と最も多く、管理トンネルの26%を占めています。国道470号(能越道)は延長が50.455kmで全管理延長に占める割合は5%ですが、山間部が多い路線なのでトンネル数割合では20%と高くなっています。


延長別トンネル数

工種別トンネル数

供用年次別トンネル数

路線別トンネル数

北陸地方全体では判定区分Ⅲの割合が橋梁15%、トンネル66%
 全国平均と比較して高い数値に

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果を教えてください
 岩見 直轄管理区間では2014~17年度の4年間で、橋梁は2,562橋の定期点検を実施しました。その結果は、健全度判定区分Ⅰが1,655橋(65%)、Ⅱが804橋(31%)、Ⅲが103橋(4%)で、Ⅳはありませんでした。
 トンネルは86箇所で定期点検を実施し、Ⅰが9箇所(10%)、Ⅱが24箇所(28%)、Ⅲが53箇所(62%)で、Ⅳは0箇所です。
 ――定期点検結果をどのように捉えていますでしょうか
 岩見 判定区分Ⅲ(早期措置段階)の割合が、当整備局管理の橋梁では4%と全国平均の9%と比較して低くなっていますが、トンネルでは62%と全国平均34%に比べて高い傾向にあります。さらに、管内の地方公共団体管理も含めた北陸地方全体でみてみると、橋梁が全国平均10%に対して15%、トンネルも全国平均42%に対して66%と、いずれも損傷の割合が高くなっています。
 塩害の影響地域にある橋梁は、塩害影響地域以外と比べてⅢの割合が高く、また凍結防止剤が散布されている橋梁では散布されていない橋梁に比べてⅢの割合が高い傾向にあります。さらなる分析が必要ですが、冬期の波浪や凍結防止剤などが橋梁の劣化に少なからず影響を与えていると考えていますので、その対策を確実に行っていきたいと考えています。
 また、北陸地方全体の9割を占める約4万橋を管理する地方公共団体、なかでも市町村では、メンテナンスを進めるための予算、体制、技術面で課題を抱えています。これらの課題については、もう少し細かく地域ごとに把握することが大切であり、メンテナンス体制も強化していく必要があると考えています。
 ――損傷・劣化状況を橋種、部位ごとに詳しくお願いします
 岩見 鋼橋では主桁の損傷割合がもっとも高く、次いで縦桁・横桁、床版と上部工の割合が高くなっています。PC橋とRC橋では、主桁の割合が高いほか、橋台・橋脚など下部工の割合も高くなっています。
 トンネルでは、ひび割れやうき・剥離などの損傷が多く見られています。国道7号の葡萄トンネル(延長320m 、1964年完成)では、覆工・アーチ部のうきが見られたことから判定区分Ⅲと診断され、剥離対策工・漏水対策工・ひび割れ注入工・塗装補修工などの補修を2019年度に予定しています。


葡萄トンネルの損傷状況

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況は
 岩見 定期点検の結果、判定区分Ⅲと診断された橋梁から計画的に修繕を進めています。国道18号の二俣橋(単純鈑桁橋、橋長32.9m、1987年架設)では、主桁端部に凍結防止剤の影響とみられる激しい腐食がみられたことから、対策として2019年度に当板補修や塗装塗替え等を実施する予定です。
 国道8号の茅蜩(ひぐらし)橋(5径間連続RC中空床版橋+単純PCポステンT桁橋6連+5径間連続RC中空床版橋、橋長352.9m、1984年架設)では、主桁に鉄筋露出などが確認されたほか、支承部に腐食がみられたため、2018年度、耐震補強工事として断面補修および支承補修を実施しました。


二俣橋の損傷状況(左:主桁/右:下横構)

茅蜩橋の損傷状況(左:主桁/右:支承部)

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の実績は。また、床版防水の施工状況について教えてください
 岩見 経年劣化による補修事例としては、国道17号の新破間(しんあぶるま)橋(単純合成鈑桁橋4連、橋長141m、1964年架設)があります。定期点検において主構造鋼材の損傷が見られたことから、判定区分Ⅲと診断されました。主桁には断面欠損をともなう腐食が確認され、速やかな補修の必要があることから、2018年度に当板補修・塗装塗替えなどを実施しました。


新破間橋の損傷状況と補修状況

 床版防水に関しては、平成14(2002)年3月の道路橋示方書改定で床版防水が義務づけられて以降、新設橋には床版防水を施工しています。既設橋についても対策を進めており、1985年架設の国道8号長坂橋(下り)(橋長58.8m)では、点検で舗装のひび割れや路面の凹凸が確認されたため、舗装打替え工による補修を実施しましたが、その際にあわせて床版防水を施工しました。

日本海沿岸の路線では飛来塩分による塩害が顕著
 歌高架橋の架け替えではさまざまな塩害対策を実施

 ――塩害、アルカリ骨材反応による劣化について、どのような形で出ているか、またその対策例などを具体的な橋梁を挙げて教えてください
 岩見 管内の特徴とも言えますが、日本海に面する路線では、飛来塩分が橋梁に付着することによる塩害が発生し、損傷の原因となっています。新潟県糸魚川地区の国道8号では海岸沿いの橋梁が長年潮風にさらされたことで、コンクリート内部鉄筋の腐食やコンクリートのひび割れが確認されています。事例としては、国道8号有間川橋(PC単純ポステンT桁橋、橋長76.8m、1962年架設)があります。


有間川橋の損傷状況(左・中央:主桁/右:柱部)

 歌高架橋をはじめとした特に損傷の激しい橋梁については、架け替えなどの根本的な対策を行っています。塩害に加えて、冬期交通を確保するための凍結防止剤散布も損傷の一因となっていると考えています。
 歌高架橋の新橋の建設にあたっては、建設段階と施工段階でそれぞれ塩害対策を講じました。旧橋で採用されたT桁よりも表面積が小さくなるホロー桁を採用し、桁に付着する飛来塩分量の抑制を試みるとともに、エポキシ樹脂により防錆機能を付したPC鋼材を利用しました。主桁はプレキャストセグメント桁とし、工場から出荷する際にはシース開口部を発砲ウレタンで塞ぎ、接合面および桁端部はビニールシートで覆うことで、打設時や輸送時に飛来塩分が混入するリスクを低減するための対策を実施しました。架設した桁の連結部においては、エポキシ樹脂皮膜層の損傷を防止するため、カバー材を設置して施工に至るまで保護しました。


歌高架橋の塩害対策

 ASRによる損傷も富山県・石川県内に多く見られます。神通川にかかる国道8号の中島大橋(下り)(4径間連続鋼非合成箱桁橋2連、橋長539m、1972年架設)ではA2橋台、P5、P6橋脚、P6-P7床版においてひび割れが確認されました。また、国道8号の小白石高架橋(上り)(単純PCポステン箱桁橋+3径間連続RC中空床版橋+単純PCポステン箱桁橋+5径間連続RC中空床版橋、橋長197.5m、1977年架設)では、下部工にASRが原因とみられるひび割れが確認されたことから、断面修復補修や表面被覆補修を施工しました。


中島大橋(下り)の損傷状況

小白石高架橋(上り)の損傷状況と補修状況

 ――塩害対策で電気防食などの採用事例は
 岩見 国道8号の新名立大橋(2径間連結ポステン中空床版橋、橋長75.3m)では、電気防食の効果検証と維持管理上の課題把握のために、継続的にモニタリングを実施しています。2001年の架設時に上部構造を4分割し、外部電源方式の線状陽極方式(チタンリボンメッシュ、チタングリッド)、点状陽極方式(チタンロッド)および面状陽極方式(チタン溶射)を設置しており、外観変状調査などを実施しています。


新名立大橋


電気防食モニタリングシステム概要と損傷状況

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