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インタビュー詳細

耐候性鋼材を用いた飯牟礼橋で比較的大きな損傷

NEXCO西日本鹿児島高速 本名川橋・思川橋を大規模更新

西日本高速道路
九州支社
鹿児島高速道路事務所
所長
南 泰夫 氏

 西日本高速道路九州支社鹿児島高速道路事務所は、この1月から4月にかけて本名川橋と思川橋の大規模更新(床版取替)を九州本土で初めて施工した。その内容や、塩害で損傷を被っている耐候性鋼材を使用した鋼トラス形式の飯牟礼橋の損傷状況と対策、耐震補強の進捗状況などを南泰夫所長に聞いた。(井手迫瑞樹)


4路線112.3kmを管理 橋梁・トンネルの比率は17%

 橋梁は148橋21.4km PC橋延長が最長

 ――鹿児島高速道路事務所の所管から

 南所長 当事務所は全体で112.3kmを所管しています。

 九州縦貫自動車道の栗野IC~鹿児島IC間56.4kmと南九州西回り自動車道の鹿児島西IC~市来IC間21.3km、加治木JCT・IC~隼人東IC間7.3km(隼人道路)、東九州自動車道の隼人東IC~末吉財部IC間27.3kmを所管しています。隼人道路は4車線化が事業許可され、これから工事が進められる予定です。東九州道および南九州道は暫定2車線で整備が進められた区間です。九州縦貫道については全て4車線で供用されています。

 供用時期は、一番古いのが1973年に開通した九州縦貫道の加治木IC~薩摩吉田IC間17.3kmです。九州縦貫道は88年までに県内の栗野IC~鹿児島IC間を供用しました。一番新しいのは2002年に開通している南九州道の伊集院IC~市来IC間11.1kmです。鹿児島西IC~伊集院IC間10.2kmについては98年に供用しています。隼人道路は92年に、東九州道の区間も02年にそれぞれ供用しました。

 ――構造物別延長は

 南 各路線とも土工部が7~9割を占めます。橋梁部は7%から3割弱で、南九州道が延長及び比率が最も高く(6.1km(29%))となっています。トンネルは全ての路線で1割を下回っています。最も延長が長く、比率が高いのが東九州道(1.6km(6%))です。

 全路線で合計すると、土工が83%、橋梁が14%、トンネルが3%という比率になります。

 ――橋種別設置数、延長及び比率は

 南 上下線別、ランプ橋をカウントしたもので、全長21.7km、148橋を管理しています。鋼橋は54橋で8.6km、PC橋は58橋で9.7km、RC橋は36橋で3.4kmとなっています。

 ――同様にトンネルの工法種別設置数、延長及び比率は

 南 全体で9チューブを管理しています。内訳は九州縦貫道の小野トンネルと田上トンネルで4チューブ、東九州道の上野原トンネル、薄木トンネル、蓑掛トンネルで計3チューブ、隼人道路の野久美田トンネルで1チューブ、南九州道の細田口トンネルで1チューブです。(NATM工法)


管理している6割の橋梁で損傷 

 法面は3割、トンネルは1割が損傷

 ――点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答え下さい。橋種や部位ごとの損傷傾向とその理由についてお答えください

 南 管内の損傷のうち、約6割が橋梁、標識などの交通管理施設が約2割、法面およびトンネルで約1割となっています。

トンネル覆工コンクリートの損傷状況

 橋梁の主な損傷は、上部工のコンクリート部材のうき、剥離や高欄のうき、剥離、排水回りの付属物の損傷、鋼桁の腐食による損傷などが見受けられます。

 


ロッキングピアは5橋全ての対策を完了

 平成8年道示より前の橋梁を耐震照査中

 ――橋梁の耐震補強進捗状況、および落橋防止装置の設置状況(全数および実施済み数)および2018、19年度の設置予定についてお答えください。また、熊本地震を受けてロッキングピアやロッカーピアの路線ごとの対策が必要な橋梁数と対策方法の詳細、進捗状況を教えてください。合わせて長大特殊橋の耐震補強の進捗状況についても教えてください

 南 ロッキングピアについては管内に5橋あります。高速道路を跨ぐ県道の崎森橋は2017年度に対策を終えています。残る4橋は加治木IC、薩摩吉田IC、姶良IC、溝部IC橋ですが、いずれも18年度末までに対策を完了しました。いずれも上下をラーメン化して補強するオーソドックスな方法です

 橋梁の耐震補強は平成8年道示より前の設計で建設された55橋について補強が必要かどうかの照査を行っている状況です。



本名川橋で2㎏/㎥超、思川橋で3.5㎏/㎥超の塩化物イオン量を確認

 何度か補修も再劣化、大規模更新へ

 ――大規模更新・大規模修繕事業のここ数年の実績と今後の予定について述べてください。また、発注の工夫、施工上の対策、同事業における新技術・新工法の活用などについて、現場ごとに行っている対策を詳細に述べてください

 南 本名川橋(下り線)と思川橋(下り線)について床版取替を行いました。九州本土では初めての大規模更新箇所です。


 本名川橋は橋長181.2mの鋼単純合成5主鈑桁+鋼2径間連続トラス橋、思川橋は橋長66m、鋼2径間連続非合成4主鈑桁橋です。いずれも供用してから45年が経過していました。RC床版は、建設時に海砂の使用が推定されたため、鉄筋近傍地の塩化物イオン量の値は、本名川橋で最大2.07㎏/㎥、思川橋で同3.54kg/㎥となっており、塩害の影響で鋼材の腐食や膨張、コンクリートのうきや剥離、舗装面へのポットホールの発生などの損傷が出ていました。

本名川橋の損傷状況

思川橋の損傷状況

 ――現在までの補修履歴は

 南 本名川橋は1991年にP1~A2(トラス部)の床版防水・舗装補修を行い、次いで94年に下面補修、95年にA1~P1(合成鈑桁部)の床版防水および舗装補修、さらには2000年と02年に再度トラス部の下面補修を行いました。次いで12年には合成鈑桁部の上面補修および下面増厚、床版防水、舗装補修を行っていました。

 思川橋は2002年に下面補修を行い、12年に上面補修、床版防水、舗装補修を行っています。

 ――それほどの補修を行っても取り替えざるを得なかったのですね

 南 再劣化を繰り返したため、抜本的な補修が必要と判断し、本名川橋と思川橋の両下り線は床版全面を取替えることにしました。

 床版以外にも格点部にたまったゴミによる腐食、橋面上の排水が上手くいっていなかったことによる桁の腐食などが生じていました。そのため格点部や桁の腐食対策としての当て板補強および取替、両橋の全面塗り替え(約3,600㎡)を行い、検査路も新設します。

 耐震対策として、端部への油圧ダンパーの追加、支承の免震支承への取替も併せて行います。

 ――条件は本名川橋も思川橋も厳しいですね

 南 思川橋は67°の斜角を有しています。既設床版の撤去は壁高欄をワイヤーソーで切断した後にクレーンで撤去し、その後に既設床版(幅員10.5m)を橋軸方向2mピッチで2分割して切断し、クレーンで撤去していきました。斜角上の既設配筋を考慮して両端部は扇型にカットし、中間部を桁に対して直角に切断撤去するという手法を採っています。

思川橋の床版撤去状況

思川橋の架設状況

 プレキャストPC床版は両端部のみ台形のパネルを配置し、その他は70°の角度を付けたパネルを31枚配置しました。

 本名川橋は、単純合成鈑桁部とトラス桁部で施工の仕方を工夫しました。

 合成桁部は、フランジ上のコンクリートを残す形で既設床版を切断し撤去し、フランジ上面のコンクリートは手斫りして除去しました。床版撤去に際しても、合成桁に負担を与えないように、重機を配置して施工しました。取替工事では、プレキャストPC床版パネルは中央部に13枚配置し、両端部6.7mは現場打ち施工しています。端部は特にスタッドジベルを200~300mmピッチで配置しなければならず、プレキャストパネルでは対応できないためです。

 トラス部は、全幅が13mにおよび、トラスの最外側にブラケットおよび縦桁を有する構造となっています。そのため、撤去は全幅を3分割する形で施工しました。撤去時の既設床版のジャッキアップにあたっては、トラス部材(主構)の損傷を避けるため、スラブアンカー部分のコンクリートを先行して斫り、抵抗を減らしたうえでジャッキアップしました。



3分割して撤去した

本名川橋のプレキャスト床版架設/同場所打ち部の施工

 橋長は140mと長いですが、A1方向は鈑桁の床版取替(前述)を行っており、重機が逃げられないため、P1からA2方向へ片押しで73枚のプレキャストPC床版パネルを配置していきました。

 ジョイントは腐食による損傷を防ぐためにアルミ製ジョイント(KMAジョイント)を採用します。

 床版防水工は全てグレードⅡで施工します。

床版防水はグレードⅡで施工した

 ――トラス桁の免震支承への取替はかなり大変だと思いますが、どのような方法で取り替えますか

 南 支承取替に際しては、そのままだと取替時のジャッキ反力が懸かればもたないため、主桁部には補強を施します。また、P1(トラス桁と鈑桁の架け違い部)とA2ではRC縁端拡幅、P2では鋼製のブラケットを設置し、300tジャッキをP1で4箇所、P2で8箇所、A2で4箇所設置し、既存の鋼製支承を撤去して新しい免震支承に取り替えます。