道路構造物ジャーナルNET

離島中心に塩害やASRに対応

鹿児島県 50年以上経過している橋梁が全体の約3割占める

鹿児島県
土木部
道路維持課長

橘木 竜一

公開日:2019.05.16

長寿命化修繕計画 620橋中554橋で対策済みまたは対策着手済み
 須崎橋を架け替え パイルベントのため補強すると河積阻害

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況は
 橘木 2008年度に「鹿児島県橋梁長寿命化修繕計画」を策定し、2014年度には点検結果を踏まえて計画の見直しを行いました。本計画では、損傷が大きい橋梁や塩害影響地域の橋梁など620橋を要対策橋梁としています。平成29年度末時点では、620橋のうち、554橋について修繕完了もしくは工事着手済みとなっています。
 ――620橋は2014年度に見直した数となりますでしょうか
 橘木 2014年度に見直しを行った際に、判定区分Ⅲに相当するもの、またⅡのうち塩害影響地域にあるものについて、重点的に対策していくのが620橋となります。
 ――2018年度の施工補修箇所数と19年度の予定は
 橘木 2018年度は134箇所で施工し、19年度は151箇所の予定です。
 ――現在施工中の橋梁で代表的なものは
 橘木 主要地方道京泊大小路線の須崎橋の架け替えを行っています。川内原発から30km圏内にある橋長97mのPC橋です。


須崎橋の架け替え状況

 ――架け替えの理由は
 橘木 須崎橋については判定区分Ⅲであり、床版や橋脚部にひび割れや鉄筋露出、縁端拡幅部に断面欠損等が多く見られます。LCCまで考慮した結果、架け替えのほうが経済的と判断しました。
 ――幅員狭小あるいは塩害などの損傷によるものでしょうか。そうした橋梁は今後架け替えていくものでしょうか
 橘木 基本は耐震補強で、あわせて歩道設置も行います。須崎橋はパイルベント橋脚(右写真)となっており巻き立てを行うと、現在基準の河積を侵してしまうことになるため架け替えを選択したものです。
 ――施工状況は
 橘木 A1A2橋台、P1橋脚は完成していて、現在、上部工を施工中です。形式としては、河積阻害率等の関係で桁高の制約があることから、バイプレストレッシング工法を採用しています。
 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2018年度施工済みの橋梁数、および19年度の予定は
 橘木 上部工のみの補修については把握していませんが、上下部工含めて平成27年度から平成29年度までの3年間で補修を完了した橋梁は、195橋です。平成30年度は60橋の補修を行いました。平成31年度の補修計画は未定です。
 ――鋼床版の疲労き裂は
 橘木 該当する橋梁はありません。
 ――床版防水の施工状況は
 橘木 床版などに漏水の痕跡や悪影響を及ぼしていると判断される場合、床版防水層の補修や設置を経済性、施工性などを比較のうえ、検討しています。最近の床版防水については、舗装切削時に施工しています。
 ――宮崎県内では、橋面舗装も含めて路面全体のコンクリート舗装を検討しています。鹿児島県ではシラスコンクリートもありますが、そのようなことは考えていますか
 橘木 現在のところ考えていません。

支承4箇所、伸縮継手22箇所を取り替え

 ――支承やジョイントの取り替え、およびノージョイント化について、平成30年度の施工箇所数を教えてください
 橘木 支承4箇所、伸縮継手22箇所の取り替えを行いました。支承取り替えについては、ジャッキアップ工法を主に採用してます。伸縮継手取り替えにおいて、ノージョイント化の予定はありません。


(一)塗木大隅線 八幡橋の支承腐食状況

 ――支承取り替えの種類と、伸縮継手の種類は
 橘木 支承については、3箇所が鋼製からゴム製、1箇所がゴム製からゴム製に取り替えています。伸縮継手についても経済性などを比較した上で、簡易鋼製ジョイントやゴムジョイントを採用しています。

塩害は離島地域の橋梁で多発
 徳之島の亀徳橋で主桁や支承部に腐食

 ――塩害による損傷は
 橘木 とくに離島地域の橋梁で多く発生しています。主に断面剥離や鉄筋露出、鉄筋腐食や高欄の腐食などが見られています。対策としては、断面修復や表面被覆工などを実施しています。


塩害の含浸材による補修

海岸にほど近い(一)佐仁赤木名線 第二佐仁橋の高欄腐食

 ――PC橋でひび割れ損傷は発生していますでしょうか。古いPC橋では上縁定着なので、グラウトのない箇所でケーブルの腐食やテンション切れが事例として発生しています。
 橘木 現在1巡目の近接目視点検結果をとりまとめているところですが、今のところ、PC橋において、そのような大きな損傷事例は確認されていません。上縁定着されている古いPC橋については、床版防水工を施すなど,予防保全に努めていきたいと考えています。
 ――鋼橋の損傷については。九州道では海岸線から離れた位置にある橋梁(飯牟礼2号橋)でも、飛来塩分で耐候性鋼材の損傷が発生している事例があります。
 橘木 伊仙亀津徳之島空港線の亀徳橋では、塩害による損傷を受けている可能性があり、主桁や支承部において腐食が進行しています。下部工も亀甲状のひび割れや遊離石灰が発生しています。


亀徳橋の桁の損傷

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