道路構造物ジャーナルNET

約1000万人の観光人口をどのようにさばくか

沖縄県 ハシゴ道路ネットワークの構築を急ぐ

沖縄県
土木建築部
道路街路課長

玉城 佳卓

公開日:2019.03.29

石垣空港線 2021年度に全線2車線、22年度に4車区間も含め供用
 長大橋は下田原大橋と高山橋を施工中

 ――離島関連で石垣空港線は
 玉城 新石垣空港と国道390号平得交差点を結ぶ8.9kmの道路で、新空港へのアクセス向上を図ること等を目的に整備を進めています。2021年度に全線2車線、2022年度に4車区間を含めた全線供用を目標にしています。
 構造物では長大橋が2橋あり、下田原大橋は橋長350m、幅員10.2mの鋼8径間連続非合成多主I桁橋で、下部工基礎はA2橋台が深礎杭基礎、A1橋台は直接基礎、他は場所打ち杭基礎となっております。現在、下部工は完成し、上部工をクレーン架設で施工を進めているところです。上部工はⅠ期、Ⅱ期と分けて発注し、2017年度に発注したⅠ期は、完成しています。Ⅱ期は今年度で契約済みとなっており、2019年度に完了予定です。

下田原大橋一般図

下田原大橋の現況
 高山橋は橋長244m、幅員12mのPC6径間連結バルブT桁橋で架設桁架設工法を予定しており、下部工基礎は場所打ち杭基礎となっております。現在、下部工はP3、P4橋脚、A2橋台が施工中であり、残りの下部工は今年度末までに発注です。上部工は未発注です。

高山橋一般図

高山大橋現況

 ――下田原大橋の施工会社は
 玉城 上部工は仲本工業・沖縄土木JVです。
 ――高山橋は
 玉城 下部工は金秀建設、沖縄土木、一廣工業、瑞穂建設です。

池武当ICを5年以内に事業化目指す
 県道74号に取り付け 高架構造

 ――計画中・設計中の路線は
 玉城 沖縄自動車道のインターチェンジ事業があります。沖縄北ICと沖縄南ICの渋滞緩和を図るため、沖縄市が2017年度にその中間地点に(仮称)池武当(いけんとう)ICの構想案を取りまとめました。それを受けて、平成30年度から沖縄県において事業化を目指し、整備検討委員会を設置しました。位置及び構造の検討を開始し、5年以内の事業化を目指しています。米軍基地内での配置も検討しましたが、返還が進まないことが想定されたため、民地で用地を取得し事業を進めることになりました。
 ――ICの構造はどのようなものになりますか
 玉城 県道74号に取り付けるフルICで、高架となります。NEXCOとも調整を進めながら検討を行っています。

宜野湾横断道路東側ルート 複数の構造物を予定

 ――ほかには
 玉城 宜野湾横断道路の東側ルートがあります。普天間飛行場の東側に計画する道路で、人口増加に伴う交通渋滞や、南北方向に地滑り地帯があり大雨等による通行止めが頻発している箇所における災害時の脆弱な道路ネットワークの改善を図ることを目的に、中城村の国道329号から沖縄自動車道の(仮称)中城ICまでを結ぶ道路です。国管理の西原道路と十字路化する予定で、西原道路の詳細が決まっていないため、延長は確定していませんが、将来的には西海岸道路まで結ぶ計画です。
 本区間には、複数のトンネルや橋梁、及びIC橋を整備する予定で、(仮称)中城ICを除く区間について5年以内の事業化を目指しています。
 ――長大橋は
 玉城 長大橋とならないルートで計画しています。

泡瀬人工島連絡橋 今年度末に下部工14基が完了
 来年度は残る下部工とPC桁製作ヤードを建設

 ――長大PC橋を伴う県道20号線について
 玉城 沖縄市泡瀬において埋め立て事業(総面積95haのうち、国が89ha、県が6haを施工)を行っており、人口島に架かるアクセス橋梁の整備をしています。埋立地が一部竣工したことで、沖縄市が潮乃森と名づけられましたが、その地区のアクセス橋梁となります。事業期間は平成25年度から2023年度の予定で、2021年度末の暫定2車線供用に向けて取り組んでいます。橋梁名称は未定です。
 概算建設費は約180億円、幅員は上下2車線計4車線、両側歩道で23.3mです。
 上部工は、ポストテンション方式PC6径間連結中空床版桁橋(陸側)+PC12径間連続箱桁橋(海側)。下部工は橋台が逆T式、橋脚がPC中空床版部分は壁式、箱桁部分は柱式です。基礎は真ん中部分については地盤がいいので直接基礎、両側については鋼管杭(φ1,100/A1のみφ1,000)基礎です。防食では、エポ鉄筋、フライアッシュコンクリート、エポキシ樹脂被覆PC鋼撚線を採用しています。

泡瀬人工島連絡橋の施工状況①

エポキシ樹脂塗装鉄筋の採用

フーチングの打設状況

 ――エポキシ樹脂被覆PC鋼撚線は2種類あります。普通のものと、大城武先生(琉球大学名誉教授)が提唱している素線ごとに被覆するものですが、どちらでしょうか
 玉城 エポキシ樹脂被覆PC鋼材については、発注段階では指定せず、内部充てん型および全素線の2種類とも使用できることとしています。
 ――ハイウォーターレベル(HWL)は
 玉城 3.2mです。
海面と桁下面とのクリアランスはほとんどない
 ――桁までのクリアランスは
 玉城 ほとんどありません。
 ――かなり桁に波しぶきがかかりそうな感じです。箱桁の塩害対策は伊良部大橋のようにするのでしょうか
 玉城 基本的には同じ方式にする予定です。
 ――進捗状況と予定は
 玉城 下部工が14基完了しています。2019年度は桁(箱桁)製作設備の設置と箱桁の一部製作、残りの下部工施工になります。
 ――架設は張出し施工で行っていきますか
 玉城 そうです。
 ――県基準で上部工の被り厚は70mmですが、増厚することは
 玉城 基準どおりの70mmです。
 ――コンクリートに使うフライアッシュは電源開発で産しているものですか
 玉城 そうです。

FAの配合及び施工指針を策定
 100年の耐久性を有する構造物を目指す

 ――新技術・新工法の活用がありましたら教えてください
 玉城 県独自の技術として「沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針」を2017年12月に策定しています。これは、本県が亜熱帯海洋性気候に属し、塩害劣化が他県より厳しい状況にあることから、コンクリート構造物の耐久性向上・長寿命化を図ることを目的に策定しています。本指針は、フライアッシュの混和剤としての利用方法や施工に対する標準の考え方を示し、100年の耐久性を有する構造物を目指すもので、宮古島に架かる伊良部大橋や本日お話した那覇大橋、新本部大橋など県内多くの橋梁で採用されています。
 その他に、持続可能な資源循環型社会の実現を目指すため「沖縄県リサイクル資材認定制度制度」(ゆいくる)を制定し、アスファルト混合物、路盤材、コンクリート二次製品など13品目567資材について、公共工事で積極的に利用促進を図っています。
 ――新橋について、鋼橋は沖縄県の塩害基準で塗替えの膜厚を増やすなどしていますが、伊良部大橋のような溶射+フッ素といった防食方法や、沖縄県がモノレールで使用している特殊な亜鉛メッキ(SGメッキ)を採用していると聞いていますが、支承や端部でそのような採用がありましたら、教えてください
 玉城 沖縄県で採用している特殊塗装としては、宮古島市にある離島架橋、池間大橋のダンパー端部のブラケットでSGメッキ(溶融亜鉛アルミニウム合金メッキ)を採用しています。また、浦添西原線の大平インター陸橋の支承ST-SGN12(高防錆表面処理)を採用しています。

池間大橋P9橋脚施工位置図およびブラケット設計図面

池間大橋/SGメッキが使われたブラケット

 ST-SGN12(高防錆表面処理)は、SGメッキに、耐水性、耐塩水性に優れるナイロン12をコーティングした二層構造となっており、100年耐用が可能な防錆処理です。

ST-SGN12(高防錆表面処理)した支承鋼材部。桁部分は錆びているが支承部分は錆びが出ていない
 ――ありがとうございました
(2019年3月29日掲載)
関連インタビュー記事「沖縄県南部土木 南部東道路の整備、那覇大橋の架替えを推進」
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