道路構造物ジャーナルNET

橋梁4887橋とトンネル251施設を管理

中国地方整備局 山陽側の都市圏渋滞対策、山陰側のミッシングリンク解消事業を推進

国土交通省
中国地方整備局
道路部長

福田 敬大

公開日:2019.03.25

竹原大橋と厚狭川橋で塩害による損傷の対策工を実施
 耐震補強対象橋梁の82%が対策完了

 ――塩害やアルカリ骨材反応による劣化は発生していますでしょうか。また、対策工法についても教えてください
 福田 塩害は飛来塩分の影響を受けやすい海岸沿いで多く見られ、主桁、床版の損傷が顕著になっています。一般国道185号の竹原大橋では、床版に剥離・鉄筋露出の損傷が発生したため、ひび割れ注入工と断面修復工(SSI工法)を実施しています。


竹原大橋の損傷状況と対策後

 ASRについてはとくに地域性はありません。部位では雨水などの影響を受ける下部工に多く見られています。一般国道190号の厚狭川橋では、橋台躯体にひびわれ、漏水・遊離石灰の損傷が発生したため、ひび割れ充填工・断面注入工・表面被覆工を行っています。


厚狭川橋の損傷状況と対策

 ――耐震補強の進捗状況は
 福田 大規模災害時の救急救命活動や復旧活動を支えるため、緊急輸送道路などの耐震補強を推進するため、全国で2017年度から2021年度の5年間で大規模地震の発生確率の高い地域で対策完了、今後の10年間でその他地域での対策完了を目指すこととしています。管内の直轄国道では、今後30年間に震度6以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域に所在する橋梁の耐震補強を優先的に実施しています。
 具体的には、緊急輸送道路上の橋長15m以上の橋梁は管内に1,538橋あり、そのうちの1,261橋(82.0%)が耐震性能2への対策済みです。落橋防止設置の対象橋梁は573橋あり、524橋で対策済みで、今年度は7橋で設置工を実施しています。
 ――鋼橋の塗替えについて、昨年度の実績を今年度の予定を教えてください
 福田 昨年度は一般国道9号の青谷高架橋(5,140m2)など6橋で全面塗替え4,653㎡、50橋で部分塗替え16,851㎡を実施しました。今年度は一般国道9号の横田橋(3,110m2)など12橋で全面塗替え34,955㎡、47橋で部分塗替え9,736㎡を行っています。


塗替え事例 青谷高架橋

塗替え事例 横田橋

 ――PCB、鉛などの有害物を含有する既存塗膜の処理はどのようにされていますでしょうか
 福田 工事着手前に既存塗装について鉛など有害物が含まれていないか試験を行っています。含有している場合は、労働安全衛生法等関係法令に基づき、適切に塗装の除去作業を行うこと、また、塗装の除去作業にともない発生した塗膜は、廃棄物処理法等関係法令に基づき、適切な処理を行うことを受注者に示しています。
 ――耐候性鋼材の採用橋梁数と健全度は
 福田 管内では130橋で耐候性鋼材を採用しています。そのうち、2017年度までに105橋が点検済みとなっており、耐候性鋼材の部材判定ではⅠとⅡが103橋、Ⅲが2橋でした。
 ――判定Ⅲとなった2橋の詳細を
 福田 国道373号の駒帰橋(橋長39.5m、単純非合成鈑桁橋、1996年架設)では主桁と下横構に腐食、防食機能の劣化が発生していましたので、当て板補強と劣化部の桁端部および主桁の下フランジの再塗装を2017年度に実施しました。中国横断道尾道松江線の国守橋(橋長173m、4径間連続合成鈑桁橋、2006年架設)では主桁と横桁に駒帰橋と同じく腐食、防食機能の劣化が発生し、今後、塗り替えを含め対策を検討し、補修を行う予定です。


駒帰橋の損傷状況と対策後

国守橋の損傷状況

 ――今年度の支承と伸縮装置の取替え、およびノージョイント化について
 福田 支承取替えが10橋、伸縮装置取替えが36橋です。また、既設埋設ジョイントの補修が1橋ありますが、新たにノージョイント化する橋梁はありません。

のり面要対策の進捗は約65%が対策完了
 岡山駅に隣接する跨線橋でFRP製恒久足場の設置工を進める

 ――のり面対策の進捗状況は
 福田 毎年の道路防災点検を通じて要対策箇所、カルテ対応箇所に分類して、箇所に応じた措置を計画的に実施しています。管内ののり面要対策の進捗は、約65%の対策が完了しています(2017年度末時点)。
 ――土砂災害に対する具体的な対策事例を教えてください
 福田 国道53号の鳥取県智頭町市瀬地内で2017年6月に発生した土砂流出では、鳥取県と連携して防災工を実施しました。当整備局は、洞門工と横断水路を設置する工事を行っています。すべての防災工が完了したことにより、昨年9月28日に事前通行規制の雨量基準を廃止しました。



国道53号(智頭町市瀬地内)の被災状況と防災工

 ――保全における新技術の活用や新たな取り組みについて
 福田 国道180号の伊達橋ではアーチ橋の垂直材と横桁の接合部などに構造的なき裂が発生して経過観察が必要になったことから、検査路を後付けで設置することになりました。しかし、鋼製検査路では死荷重が大きくなりすぎることから、軽量で高耐食性のアルミニウム合金製検査路を採用しています。現在、制作中で、2019年4月頃から設置する予定です。
 国道53号の万跨線橋(橋長88.9m、1973年架橋)は岡山駅に隣接し、11本の線路を跨ぐ橋梁です。維持管理において、仮設吊り足場では時間的制約や桁下クリアランスの関係で難しいことから、点検年次に合わせてFRP製恒久足場の設置工を進めています。


万跨線橋 恒久足場設置工

 老朽化が著しい、呉市が管理する仁方隧道にて、トンネルでは全国としても初めてとなる「直轄診断」を本年3月に行いました。「直轄診断」とは、地方公共団体への支援のひとつとして、緊急的な対応が必要かつ高度な技術力を要する施設において、地方整備局、国土技術政策総合研究所、土木研究所の職員で構成する「道路メンテナンス技術集団」を派遣し、技術的な助言を行うものです。


呉市仁方隧道での直轄診断

 ――ありがとうございました
(2019年3月25日掲載 聞き手=大柴功治)

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