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13路線917km、465橋と14トンネルを管理

2019新春インタビュー② 網走開建 高速ネットワーク系で2路線、防災系で2路線の整備を推進

国土交通省
北海道開発局
網走開発建設部長

渡邊 政義

公開日:2019.01.01

CおよびE判定の168橋のうち25橋で補修が完了
 要対策橋150橋のうち耐震性能2への対策済みは104橋

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況は
 渡邊 平成29年12月版の橋梁長寿命化修繕計画(案)では436橋が対象となっています。点検でCおよびE判定とされた橋梁は、平成25年度が24橋(点検橋数全体の28%)、26年度が30橋(35%)、27年度が28橋(33%)、28年度が26橋(35%)、29年度が60橋(60%)と増加傾向にあります。
 CおよびE判定とされた168橋のうち、補修が完了している橋梁は25橋で、平成30年度は18橋の補修・補強を行う予定です。
 ――橋梁の架替えや大規模修繕の予定は
 渡邊 現在、老朽化にともなって架替えや大規模修繕を実施している橋梁はありません。しかし今後は、老朽化による損傷が激しく、補修が困難となる橋梁については架替えも含めて検討が必要になってくると考えています。
 ――耐震補強の進捗状況と耐震補強対策を実施している橋梁がありましたら教えてください
 渡邊 管内の要対策橋は150橋あり、耐震性能3への対策はすべて完了しています。耐震性能2への対策済みは104(69.3%)橋で、未対策橋は46橋(30.7%)となっています。
 平成30年度内には国道334号の峰陽橋の耐震補強対策(落橋防止工設置)を完了する予定です。国道244号の斜里新大橋の耐震補強対策(橋脚のRC巻立て、落橋防止工設置)も進めており、平成31年度に完了予定となっています。


峰陽橋の耐震補強工事

斜里新大橋の耐震補強工事

管内465橋のうち215橋で床版防水を施工
 国道39号富士見小橋の地覆端部で凍害劣化が発生

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と、平成30年度の施工計画は。また鋼床版の疲労亀裂が発生している橋梁はありますでしょうか
 渡邊 平成27年度からの3カ年で20橋の上部工について補修・補強を実施しました。主な工事としては床版防水・床版断面補修・ひび割れ注入となります。平成30年度は7橋で補修・補強を実施予定です。鋼床版の疲労亀裂の該当橋梁はありません。
 ――管理する橋梁における床版防水の施工状況と今後の施工方針は
 渡邊 古い橋梁の床版防水については不明なものも多く存在しますが、調査した範囲では、管内465橋のうち、215橋(約46%)で床版防水を施工しています。直近では平成29年度に11橋の施工を行っており、平成30年度は6橋を予定しています。
 今後の施工方針としては、定期点検などにおいて防水層の有無による舗装・床版の損傷が確認された場合、別途詳細調査を行った上で、必要に応じて床版防水工を設置していくことになります。


平成29年度に床版防水工を施工した国道242号・一念橋、国道244号・涛沸橋、国道39号・深沢橋

 ――具体的な防水工の種類は
 渡邊 補修では塗膜系での施工、新橋は塗膜系と端部のみ吹き付けという基準になっています。
 ――支承や伸縮装置の取替えの実績と予定、ノージョイント化についてお教えください
 渡邊 平成30年度および平成31年度の支承取替え予定はありません。伸縮装置取替えは平成30年度に10橋、平成31年度に5橋の施工を予定しています。施工工法については、一般的な鋼製ジョイントや埋設ジョイントの取替えに加えて、鋼製ジョイントのフェイスプレート下にある排水樋を取替える工法(乾式止水材)などがあります。
 ノージョイント化については、管内でπラーメン橋とポータルラーメン橋の新設橋を各1橋ずつ予定しています。
 ――塩害、凍害、ASRによる劣化がありましたら
 渡邊 平成30年度に損傷補修を発注している国道39号の富士見小橋(プレテン桁、橋長12.6m)で劣化が生じています。同橋は昭和34年の供用で59年が経過しています。損傷は、凍害劣化が主たる原因で、地覆端部で遊離石灰とはく落が発生しています。平成5年度に現在のガードレール(めっき防食)へ取り替える際に、今回再補修する地覆部も補修していますが、平成26年度の橋梁点検時に主桁地覆部がC判定とされ、補修を進めています。
 対策工としては、劣化損傷部の断面補修、ひび割れ部へのエポキシ樹脂注入・雨水の水分供給を断つために水切り工の設置を予定しています。


富士見小橋の損傷状況

富士見小橋での対策工

岩石やのり面の経年変化を有識者に調査依頼
 今冬に知床峠で無人化除雪作業を試行

 ――鋼橋の塗替えについて、平成29年度の実績を平成30年度の予定を教えてください。また、PCB、鉛などの有害物を含有する既存塗膜の処理はどのようにされていますでしょうか
 渡邊 全面塗替えの予定はありませんが、桁補強や橋梁補修にかかわる部分塗替え塗装を行っています。平成29年度は3橋で85㎡、平成30年度は1橋で37㎡の予定です。また鉛およびPCB処理については、平成29年度実績で3橋あり、作業箇所の防護やクリーンルームの設置などを行っています。処分については、鉛についてはイトムカ鉱業所、PCBについては秋田県内の無害化処理安定施設まで運搬して処理しています。
 ――耐候性鋼材の採用については
 渡邊 43橋で採用しています。現状の点検では、伸縮装置の漏水による若干の腐食が認められますが、Ⅲ判定に該当する重大な損傷が見られる橋梁はありません。腐食の進行を止めるために計画的に漏水対策の補修を行う予定です。
 ――道路に面する斜面やのり面対策では真鯉道路で事業を進めていますが、異常気象による土砂災害が各地で生じているなかで、防災や減災に対するお考えを聞かせてください
 渡邊 降雨量は少ない地域ですが、最近は雨の降り方も変わってきていますので、道路管理においても突発的な豪雨に対応できるようにすることは必要だと考えています。真鯉道路のような具体的な対策はまだ限定的ですが、岩石やのり面の経年変化が把握できるように防災の有識者に調査を依頼しています。そのような予防的な部分では、モニタリングなどにICTを活用して効率化を図ることがひとつの流れだと思います。
 ――管内ののり面の要対策箇所は
 渡邊 53箇所となります。平成30年度は、国道243号の古梅地区で切土工(100m/2箇所)を行っています。
 ――新技術の活用などは
 渡邊 北海道開発局では、i-Constructionの一環として除雪現場の省力化による生産性・安全性の向上(i-Snow)に取り組んできました。その取り組みのひとつとして、今冬に国道334号の知床峠(冬期通行止め区間)で無人化除雪作業の試行をします。通常は運転手とオペレーターの2人1組で作業を行いますが、運転手のみで作業を行うことの検証となります。


知床峠での除雪作業(現状)

「i-Snow」の具体的な取り組み(案)(北海道開発局HPより抜粋)

 ――ありがとうございました
(2019年1月1日掲載 聞き手=大柴功治)

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