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下塩原第一橋梁(仮称)ではメラン架設工法を県内初採用

栃木県 常総・宇都宮東部連絡道路、下塩原バイパスなどの事業を推進

栃木県
県土整備部長

江連 隆信

公開日:2018.11.27

 関東1都6県で最も広い面積を有する栃木県では、県央部・東部・西部の各南北軸と県央部・北部・南部の各東西軸のネットワーク強化に取り組んでいる。その県央部南北軸のひとつとして常総・宇都宮東部連絡道路の整備を推進している。県央部の鬼怒川東側には工業団地が集積し、産業活動の一大拠点となっているため、その活力維持とさらなる発展を目指してのものだ。また、西部や北部の山岳部では自然災害に強いネットワークの構築を目的として、栃木西部・会津南道路や下塩原バイパスなどの整備が進められている。これらの整備事業に加えて、橋梁を中心とした保全分野の取り組みについて、県土整備部長の江連隆信氏に聞いた。

宇都宮市の鬼怒川東側には工業団地が集積
 鬼怒川を渡河する交通確保が極めて重要に

 ――栃木県の概要と地勢の特徴は
 江連部長 栃木県は関東地方の北部に位置し、東北との結節点となっています。面積は関東1都6県で最も広い6,408km2で、東西84km、南北98kmのほぼ円に近い形です。県中央部は鬼怒川などの扇状地もしくは平地で、東部は茨城県との県境にある標高1,022mの八溝山を中心とした八溝山系がありますが、概ね丘陵地となります。西部は日光連山、那須連山が連なる山岳地帯で、群馬県境には県内一の標高2,578mの日光白根山があります。南部の渡良瀬遊水地の標高が約15~20mですので、非常に標高差がある地形と言えます。
 河川では、鬼怒川が県の北西部から県都・宇都宮の東側を通って南に流れています。また、東部は那珂川が那須連山を源として茨城県へと流れています。平地では川幅が広くなっているため、橋梁約700m~900mの長大橋が架かっており、山間部では谷底平野を形成して流れ、特殊橋も多くなっています。


平地および山間部に架かる長大橋一覧(栃木県提供、以下同)

板戸大橋/那須高原大橋

 ――県内の道路網は
 江連 栃木県は昔から関東と東北を結ぶ交通の要衝で、江戸時代には五街道の奥州街道、日光街道に加えて、朝廷からの勅使が通る例幣使街道が往来の中心でした。現在は、東北縦貫自動車道と、北関東3県を結ぶ北関東自動車道の2本の高速道路、国際観光地である日光への一般有料道路日光宇都宮道路があり、直轄国道では国道4号が南北を、国道50号が県南部の東西を結んでいて、これらが県内の交通網の軸となっています。
 ――県道では
 江連 宇都宮と県内人口第3位の栃木市を結ぶ宇都宮栃木線があります。全線4車線化されていて、国道4号とともに県南部を結ぶ幹線道路になっています。宇都宮市には、鬼怒川の東側に内陸型の工業団地としては日本最大規模と言われる清原工業団地をはじめとした一大工業団地があります。そのため、鬼怒川を渡河する交通の確保が極めて重要になっており、国道123号のほか宇都宮茂木線、宇都宮向田線が県の東部地域を結んでいます。

南北軸3本、東西軸3本の整備でネットワークを強化
 県西部の南北軸として栃木西部・会津南道路を整備

 ――道路の整備方針は
 江連 栃木県では平成28年から5カ年の総合基本計画「とちぎ元気発信プラン」を策定しており、そこに掲げる将来像の実現に向けて広域的な幹線道路網のあり方を定めた「とちぎみちづくり構想」を平成28年6月につくりました。それまで平成10年策定の「広域道路マスタープラン」をもとに道路整備をしてきましたが、それを一部見直したものとなります。
「とちぎみちづくり構想」では、「コリドール(回廊)ネットワーク」という県の構想のもとに、県央部、東部、西部それぞれを南北に貫く3本の縦軸と、県央部、北部、南部を東西に貫く3本の横軸のネットワーク強化を図っています。
 ――主要軸の整備状況は
 江連 県央部の南北軸として東北道がありますが、一般道では国道4号がその役割を担っています。宇都宮から南側は早い時期から大規模バイパスとして新4号国道を直轄で整備しており、6車線化が完了しています。現在、宇都宮から北の整備が進められていて矢板まで4車線化されていますが、直轄で矢板拡幅、矢板大田原バイパス、西那須野道路の事業や都市計画手続きを進めています。
 県西部の南北軸では、平成10年に地域高規格道路の候補路線に指定された栃木西部・会津南道路(国道121号)の整備に取り組んでいます。日光市の日光宇都宮道路から鬼怒川温泉や川治温泉を通り福島県の南会津町までの延長約60kmとなります。東北道の西側の南北軸が関越道までなく幹線道路網の空白地帯となっていますので、ネットワーク強化の目的もあります。県内は鬼怒川温泉の先の龍王峡まで一部を残して整備が完了していますが、そこから先は未整備となっています。平成27年の関東・東北豪雨の際には土砂流出や落石、路肩崩落のために通行止めになった区間もあり、早急に整備を進めなければなりませんが、急峻な山地であり、鉄道の線路やトンネル、ダムの発電施設などを避けなければならず、技術的難度が高い工事が想定されています。そのため、栃木県としては直轄権限代行での整備ができないか調査を進めています。


事業平面図

宇都宮環状北道路の交差点立体化事業を推進
 常総・宇都宮東部連絡道路は工業団地周辺部の整備を先行

 ――進捗中の事業路線を教えてください
 江連 県都である宇都宮では都市環状線の整備をいち早く進め、平成8年に宇都宮市街地を一周する宇都宮環状道路が全線開通しました。都市計画では主要な道路との交差点立体化が計画されていましたので、その事業を順次進めています。現在は、環状線の北側部分である宇都宮環状北道路(国道119号)の交差点立体化事業を進めています。
 県北部では下塩原バイパスの整備を行っています。国道400号の一部で、異常気象時通行規制区間(連続雨量200mm超過で全面通行止)が存在するとともに、現道の幅員が狭く週末や観光シーズンに渋滞が頻発しているほか、落石の危険性も非常に高くなっています。そのため、県内有数の観光地である塩原温泉郷を含む塩原地区の生命線道路の安全確保と、地域間の産業・経済活動の連携強化を目的にバイパス整備を進めています。
 さらに、鬼怒川東側(左岸)に集積している工業団地の活力を維持しさらなる発展を遂げるために、南北を貫く幹線として常総・宇都宮東部連絡道路の整備があります。常磐道谷和原ICと東北道矢板ICを結ぶ全体延長約100km(栃木県内50km、茨城県内50km)の地域高規格道路です。
 栃木県ではまず工業団地周辺部の整備を南から真岡南バイパス(延長3.1km)、真岡バイパス(延長2.1km)、真岡北バイパス(延長3.7km)、真岡宇都宮バイパス(延長5.2km)、清原通り(延長3.9km)、宇都宮高根沢バイパス(延長6.6km)と工区を分けて行っています。


事業平面図

 真岡バイパス、真岡北バイパス、真岡宇都宮バイパスは供用しましたが、一部が暫定2車線となっていますので、その4車線化事業を進めています。
 真岡南バイパスは用地買収中ですが一部で地盤改良工事を始めています。清原工業団地内を通る清原通りは4車線となっており、当面は現道を活用します。
 宇都宮高根沢バイパスは一部(延長2.7km)を暫定2車線で供用していて、その南側部分の工事を来春までに完了して県道宇都宮向田線と接続する予定です。県道宇都宮那須烏山線から国道4号までの区間は用地買収中です。
 また路線整備事業ではありませんが、スマートICの設置にも取り組んでいます。
 栃木県内の高速道路は隣接県に比べてIC数が少なく、IC間距離が全国的に見ても長大な区間が複数存在していますので、高速道路の機能をより有効活用し、利便性の向上を図るためです。これまでに3箇所のスマートICを設置し、現在は各市町とともに東北道で(仮称)大谷スマートIC、(仮称)都賀西方スマートIC、(仮称)矢板北スマートIC、北関東道で(仮称)出流原PAスマートIC、(仮称)下野スマートICの設置を進めています。

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