鋼橋塗替 2018年度は5橋で実施予定
塗膜剥離 土木鋼構造物用塗膜剥離ガイドライン(案)に準拠予定
――鋼橋塗装の塗り替え実績および、塗替え時のPCBや鉛を含んだ塗膜の除去についてどのような工法を用いていますか
山田 2017年度は全て端部塗装で全面塗り替えはありません。18年度は5橋(鈑桁)で塗り替えを予定しています。
既設塗膜からPCBや鉛などが検出された際には、土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)に基づいて適切に塗膜の除去を行った後に、素地調整して塗り替えを行う予定ですが、現時点でPCBを含む橋梁で塗り替えた実績はありません。
鋼桁端部の発錆、腐食(国道369号上内牧橋、1973年供用、橋長36m)
――耐候性鋼材を用いた鋼橋において留意すべき点はありませんか
山田 奈良県が所管する橋梁で耐候性鋼材を採用した橋梁は約40橋あります。今回の点検でⅢ判定になっているものは幸いにしてありません。桁端部は(漏水による劣化を防止するため)基本的に重防食塗装を行っています。
耐候性鋼材を採用している田長瀬橋(2006年竣工、橋長245m、アーチ支間174m、鋼上路式ローゼ橋)
奈良県管理道路のり面 1705箇所の要対策箇所
339箇所で対策済み 台風が起きるたびに数は増える
――奈良県も紀伊半島大水害が記憶に新しいですが、近年、気候変動の影響でしょうか、水害が各地で生じています。それに従い、のり面や自然斜面の崩落、河川内橋梁の流失などが起きています。こうした状況に対する手当を何か考えておられますか
山田 のり面は平成8年、18年の道路防災総点検で計上しただけでも、現在1,705箇所の要対策箇所があります。個所数が膨大であり、年度ごとに補修予算は確認しています。しかし現実には、昨年も台風21号があって、通行止めが約100箇所で発生し、国道168号、169号では、のり面が崩れました。一たび災害が起きると、当初予算とほぼ同規模の災害対策費を確保して、崩れた道路のり面の復旧を行わねばなりません。1,705の要対策箇所を減らす努力もしており、339箇所が対策済みですが、新たに災害が起きることで対応しなければいけない箇所が増えてしまい、自転車操業的になっている状態です。これを改善するためには抜本的に予算を増やすことが必要です。
――対策の優先順位は
山田 山間部の緊急輸送道路やで迂回路のない地域であり、かつ危険度の高い箇所を優先的に進めています。
――奈良県は規模が大きく、高いのり面や自然斜面が多い印象があります
山田 その通りです。特に国道168号、169号は顕著です。しかし県南の町村にとっては、急峻で崩れやすい箇所に縫うように建設されている両国道が、代替ルートのない命の道であるわけです。だから権限代行事業が採択されやすいという側面があります。
――こうした巨大なのり面、自然斜面を補強するとなると、アンカーなど補強規模も大きくならざるを得ないですね
山田 そうですね。切土するとなると、極めて広範囲に高く切る必要がありますのでアンカーで角度をできるだけ高くするという方向にせざるを得ない状況です。それに伴い、工事費は高くなる傾向です。
本当は新技術を使ったり、橋梁やトンネルのような長寿命化修繕計画を立てたいですが、箇所が膨大であり、災害ごとにさらに数が増えるため、都度対応が精一杯というのが実情です。
――保全における新技術・新材料の採用について
山田 インフラメンテナンス国民会議や内閣府が行っているSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において、新技術の実証実験フィールドを積極的に提供しています。例えば、桜井市の三輪高架橋(784.2m)において、打音検査も含めた橋梁点検が可能なドローンの実証実験を行いました。また、県南の法面でMMS(モービルマッピングシステム)車やドローンを利用した点検の実証実験を行いました。
――ありがとうございました
(2018年10月16日掲載)