道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑩宮地エンジニアリング

千葉工場に50憶円の設備投資 生産効率化と社員の安心安全の確保を図る

宮地エンジニアリング株式会社
代表取締役社長

青田 重利

公開日:2018.10.08

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、宮地エンジニアリングの青田重利社長の記事を掲載する。

 ――前年度の業績についてお伺いします
 青田 2017年度はグループ全体で好収益をあげることができた。さらに受注残が820億円となった。
 ――今年度の業績目標は
 青田 今年度はグループ全体で売上525億円、営業利益、経常利益ともに40億円、純利益は30億円を見通している。工場の山積みは高平準化、収支管理システムが軌道に乗るなど、これまで実施してきた施策の効果が出てきている。
 ――具体的には
 青田 新設橋梁をはじめ架設技術が高く評価されている民間営業に関しても客先から多数の問い合わせがあり、官・民ともに積極的に営業を展開している。グループ全体では第1四半期終了時ですでに受注残を930億円まで上積みした。需要が高まりつつある保全事業は、工事内容によって高・中・低難度にすみ分けられる。当社の役割・使命は国土交通省や高速道路会社の大規模更新、JRをはじめとした鉄道関連の高難度工事にあると考えている。
 幅広い技術提案ができるように以前から実施しているPC会社や補修会社との勉強会も継続しており、近く共同で技術提案活動も展開していく。
 他社と差別化する宮地i-Bridgeの第一号が、無水式ワイヤーソーでの既設床版と壁高欄を切断・撤去する施工技術の開発である。すでに公開施工試験も実施しており、工期を21%短縮する工法である。第二号として、無線式モニタリング技術(OSMOS)の架設工事への適用に向けたシステムの開発である。安全施工に貢献する新技術と考えている。今後は第一号とともに積極的に提案営業を推進するため、営業本部の組織改正を10月1日で実施した。


無水式ワイヤーソーの公開施工試験

 ――設備投資計画は
 青田 当社の架設技術・能力は高い評価を得ている。さらに、総合エンジニアリング会社として存在感を高めていくために、ファブの部分でのさらなるコスト競争力の向上が喫緊の課題であり、今年度から千葉工場への設備投資を開始する。
 具体的には、①ヤードの整備と効率化 ②塗装工場の再構築 ③新事務所の建設である。
 千葉工場は橋梁工場としては最大級の敷地面積を有しており、構内ヤードを再整備し、仮組立から塗装工程・発送までの一気通貫の管理システム構築により、ヤードの使用率を60%向上させる。これにより、構外ヤードの削減、横持費など変動費を大幅に減少させコスト縮減を図っていく。そのROIは23%である。
 塗装工場の再構築は、塗装設備増設を含めた塗装ラインの再構築により、塗装能力と品質の向上による一層のコスト縮減を実現するものである。
 新事務所の建設は、当社千葉工場が東京湾内市原市に位置していることから、大規模地震・津波に備え、社員の安全・安心を担保すると同時に、本社ビル被災の場合の事業継続性を確保するものである。建物概要は1年間かけ、女性社員等若手の意見も取り入れながら具体化していく。
 これら工場への設備投資などにより、一層の生産性向上を図り、競争力のある工場に再構築するとともに、給与・休暇・希望の「新3K」を実現し、社員の安心安全を確保する職場環境を目指す。
 今回の設備投資などに4年間で総額50億円を見込んでいる。
 ――人材の確保・育成は
 青田 昨年から導入した「在宅介護に伴う再雇用を前提とする退職制度」は、在宅介護を理由としてやむを得ず退職した社員が介護の必要が消失し、再雇用を希望した場合に再雇用を保障する制度であり、すでに活用社員が出てきている。人材育成については、新規の高卒採用者を対象に、技術本部の技術陣が構造などの必要な知識や技術を教育・育成していくシステムを導入する。一定の技術や公的資格を取得した際には、社内資格として認定し処遇する制度である。
 ――そのほかには
 青田 人材確保の施策として「新3K」の実現があるが、それだけでは新卒の人材確保は難しいと危惧している。すなわち、道路インフラに夢のある橋梁形式の採用が技術の継承との関係でも必要ではないか。先人は予算も技術も“無い無い尽くし”であった時代に隅田川の16橋を架橋し百年橋梁として存在感を示しており、今こそ先人のように百年橋梁を創ろうとの発想が求められているのではないか。そのためには国民の理解も必要であり、予算措置も必要であり、作り手の私達もそのような仕事を創ることへの役割分担的努力をしていかなくてはならないと考える。
(聞き手=佐藤岳彦、文中敬称略 2018年10月8日掲載)

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