道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ③日本ファブテック

3社・270年の技術と信用引き継ぐ 足元固め堅実経営目指す

日本ファブテック株式会社
代表取締役社長

小野 重記

公開日:2018.09.03

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第2回目は、日本ファブテックの小野重記社長とJFEエンジニアリングの川畑篤敬常務執行役員の記事を掲載する。

 ――前期の業績から
 小野 前年度は受注高515億円で、内訳は鉄骨245億円、橋梁271億円。売上高は484憶円。経常利益は29億円だった。鉄骨の収益が改善したことで、前期に比べ大幅な増益を達成することができた。
 ――各工場の足元の稼働状況は
 小野 取手(茨城県)、熊谷(埼玉県)、防府(山口県)、千葉臨海の4工場とも山が基準に対して2~3割増しの状態にある。この余剰分の消化・解消に向けてフル稼働を続けているところだが、予定していた生産が少しずつズレ込んでおり、現場と打ち合わせをしながら工程調整をさせてもらっているのが実情だ。
 ――そうした状況が生じた要因は
 小野 図面決定の遅れや現場打ち合わせなど前捌き段階の不備によって工場製作を予定通りにスタートできなかったのが大きな要因だ。こうした事態が生じる背景には、われわれファブ側の打ち合せ能力の不足ももちろんあるが、やはり現場側にも設計事務所側にも原因がある。これだけS造が増えているなか、とくに現場の工事監理者には、鉄骨製造の流れというものをもっと理解してもらいたい。さらにこうした状況にコラムやビルトHの需給ひっ迫、納期の長期化が追い打ちをかけている。
 ――今年度の業績目標は
 小野 受注高480億円、売上高450億円、経常利益3%を目指す。部門別の受注量は鉄骨7万t、橋梁1万9,000t、セグメント1万7,000tが目標だ。
 ――受注状況は
 小野 橋梁は今年度20万t前後の需要が見込まれるが、NEXCOの大型物件の発注もあって7月下旬までにすでに10万tが発注済みの状況にある。本来であれば弊社も年間目標の半分を受注していなければならないが、やや苦戦している。これから秋口にかけての中盤戦でしっかり受注を伸ばしていきたい。
 鉄骨の山は、年度内は年明け後の3カ月間に多少の余裕がある。来年度については半分程度が埋まった状態だ。ここにきて足の長い超大型案件の受注が増えている影響もあり、受注実績に比べて来年度の工場山積みが今一つ上がってこない印象がある。


幸久大橋 P12~P15(茨城県)

 ――今期の設備投資計画
 小野 全体として10億円規模の投資を計画している。昨年は熊谷工場の建屋を増築したが、今年は工場内の製造設備の更新が中心となる。具体的には、取手工場の糸面取り機、柱大組立溶接ロボット、屋外クレーンの入れ替えなど。また、全社的な生産性のさらなる引き上げを目指し、各工場の専門性をより高めるための工場再編成も検討していく。
 ――自社商品の動きは
 小野 弊社はスリーブ孔補強工法『EGリング』を販売しているが、その改良型を開発した。今月中に認定を取得し、対外発表できる見通しだ。もともと製品価格には自信があった商品だが、今回の改良で取り付け溶接量が減り、トータルコスト面で競争力が増した。同じく弊社が取り扱うCAD/CAMシステム『KAP』のデータと連動してEGリングのサイズを自動設計することもできるので、そのあたりもアピールしてシェア拡大を目指したい。
 ――最後に各部門の課題と展望を
 小野 橋梁は営業力、提案力の強化を図って受注を伸ばしていく。現在、弊社は業界7番手前後に位置するが、ランクアップを目指したい。一方では、その量にもしっかりと対応し得る生産体制を整えていく。
 鉄骨は当面の間、高い山積みの消化に全力を挙げ、ご迷惑を最小限にとどめることが第一。受注活動は、来年度の山積み確保に向けて引き続き積極的な営業を展開していく。今年度末の時点で、来年度の山が8割程度埋まっている状態に持っていきたい。弊社は東骨・片山・エモトという、合わせて270年の歴史を持つ企業が統合して誕生した。その技術と信用を引き継ぎ、足元を固めて堅実経営を目指す。
(聞き手=田中貴士、文中敬称略 2018年9月3日掲載)

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