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バランスを考えつつ保全へシフト 海外市場へ積極展開

横河ブリッジ 髙田和彦社長インタビュー

株式会社横河ブリッジ
代表取締役社長

髙田 和彦

公開日:2019.12.01

橋梁総合エンジニアリング会社を標榜
 難しい橋へのチャレンジは横河のプライド

 ――NEXCO3社や首都高速、阪神高速などが進める大規模更新・大規模修繕事業、保全事業の拡充をどのように行っていきますか
 髙田 当社は「橋梁総合エンジニアリング会社」であると標榜しています。強みはもちろん鋼橋であり、これについては絶対的な自信を有しています。今後は+αとして橋梁関連商品やコンクリートもカバーしていくことを目指します。ただし繰り返しますが、保全事業は当社だけでできるものではないと考えています。ワイ・シー・イーや横河NSエンジニアリング、横河技術情報などとグループ全体で手を携えていくと共に、他社、異業種とのJVも積極的に行っていきたいと考えています。


近年の主な補修補強実績① 関門橋(井手迫瑞樹撮影)

近年の主な補修補強実績② 山家橋(井手迫瑞樹撮影)

 ――三井住友建設が鋼橋エンジニアリング部隊を作っていますが、横河ブリッジも昔から横河メンテック~横河工事由来のコンクリートの専門部隊を抱えています。PC床版も含めたコンクリート分野の維持更新に技術的にも打って出ることは考えないのですか
 髙田 ゼネコンやPC会社とのアライアンスを基本として考えています。コンクリート技術を自社としてもしっかりと抑えていくスタンスは変わりませんが、全てを自分の手で行うことは能力的にも難しいですし、いざやろうとしてもリソース的に無駄が多くなってしまいます。やはり得意な会社と手を結ぶことも重要と考えます。

急速施工可能なプレキャスト壁高欄
 既設床版撤去工法としてサブマリンスライサーを開発

 ――大規模更新・大規模修繕事業における技術開発は
 髙田 急速施工可能プレキャスト壁高欄と床版更新に関する研究開発を進めています。
 前者は床版更新工事における壁高欄のプレキャスト技術です。太径鉄筋(D41)を利用したもので、定着の原理は一般のガードレールやNEXCO各社の半壁高欄で用いられる高欄と同様の埋め込み式で、四隅に雌ねじインサートがあって高さ調整用のボルトを回すことで容易に高さを調整できます。また、周囲に溝が切ってあるため、落とし込むだけで地覆鉄筋と干渉することなく設置することが可能です。衝突試験を昨年に実施し、商品化にこぎつけました。急速施工が可能で、構造は基本的に鉄筋とコンクリートのみの施工のためコスト縮減にも寄与します。


PCa壁高欄の開発(横河ブリッジ提供)

 床版更新に関する研究開発は、首都高速道路と共同研究しており、夜間1車線規制と昼間交通開放を繰り返しながら床版更新する条件で、床版接続部の安全性を確保する取り組みと効率的な施工法の確立を目指しています。
 首都高速とは過去にも床版更新の急速施工について共同研究しました。
 ――どのような内容ですか
 髙田 西名阪道の御幸大橋の床版取替を応用したものです。
 ――上フランジ付近のウェブをあらかじめ水平に切断し高力ボルトで仮添接しておき、床版更新時に高力ボルトを外すことで切断床版とずれ止め、上フランジとウェブの一部を撤去して、代わりにウェブと上フランジをボルトで取り付け、床版を取替る工法ですね
 髙田 そうです。しかし、当時はベントを立てる必要がありました。そのためベントを立てることができない場所での適用を考えて支持桁による合成桁の床版更新の急速な施工可能な工法を開発したものです。重ね梁の機能を持たせた梁を主桁から吊り下げる形で設け、ベントに代わって主桁を支持する工法のため、外ケーブル工法に比べてたわみの改善効果が大きく、主桁に圧縮力が導入されることもありません。

 ――既設床版撤去工法としてはサブマリンスライサーを開発しましたね
 髙田  はい。同工法は、大林組、コンクリートコーリングと共同開発したもので、鋼橋の床版取替工事において、床版下から乾式のワイヤーソーを用いた超低空頭の乾式水平切断装置により、桁と床版の接合部をずれ止め含めて水平切断することで施工ステップを大幅削減し、床版撤去に伴う交通規制の期間を短縮する乾式水平切断工法です。従来工法に比べて施工ステップを削減でき、交通規制期間を従来の65%程度に短縮することができます。乾式ワイヤーソーを用いているため、従来用いてきたコンクリートカッターとブレーカに比べて、排水や騒音が少なく、床版が桁上に載ったままの安定した姿勢で作業できるため、安全に施工できるのも特徴です。大林組JVの中央道の大規模更新現場で初めて使われる予定です。


サブマリンスライサー(横河ブリッジ提供)

 ――大規模更新の現場では、床版の撤去・架設だけでなく桁ごと取替える現場も出てくるようです。床版もPCaPC床版が基本ですが、合成床版や鋼床版などそれ以外の床版形式にも柔軟な傾向があります
 髙田 新設事業ですが、当社が受注した東北中央道の工事でも、PC床版から合成床版に形式変更が認められました。工期短縮の観点からですが、珍しいことです。


東北道 高畠深沼橋(大柴功治撮影)

 ――いわゆる合理化合成床版ですか
 髙田 当社のパワースラブです。
 ――それは異例ですね。桁ごと取り替える工法については
 髙田 その工事は、工期が厳しい現場でした。そうした現場では、取り立てて新しい工法を開発するというのではなく既存の工法をうまく組み合わせて提案し、実行する能力が今まで以上に問われていると感じています。その力に磨きをかけていきます。

 ――横河ブリッジは、横河工事が分かれていた時代から、難しい鋼橋のメンテナンスを受注するな、と思っていました。最近では関門橋、阪和道の特殊長大橋、京都府の山家橋などが思い浮かびます。今後はNEXCOの特殊長大橋の耐震補強も発注されてきます
 髙田 難しい橋のメンテナンスを受注するのは横河のプライドです。このプライドを支えるべく、現場の技術者は勿論、研究所や設計、計画分野にも多くの人材を配置し、充実した環境で育てています。今後もこうした体制を継承し、200年続く橋梁総合エンジニアリング会社になりえるように技術力・開発力を向上させていきます。
最近では中央区(東京都)発注の豊海橋(鋼単純フィーレンデール橋、横河橋梁製作所の元請で1927年竣工、橋長46.7m)の嵩上げ(治水安全性、交通路としての利便性向上のために40cm嵩上げした)および鋼床版補修も施工しました。また、NEXCO西日本四国支社管内では大豊IC~南国IC間の橋梁耐震補強も受注しています。


豊海橋(横河ブリッジ提供)

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