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ロッキングピア、長大・特殊橋の耐震対策も急ピッチで進む

NEXCO中日本名古屋支社 大規模更新・大規模修繕事業が本格化

中日本高速道路株式会社
名古屋支社
保全・サービス事業部長

池田 光次

公開日:2018.07.25

ポスTの変状は中央道などで確認

 ――PCポステンT桁橋はどういう状況ですか
 池田 数はありますが、変状は多くないですね。間詰め部分の変状が少しあるが、桁本体の変状はありません。
 ――上縁定着の部分のグラウト充填不良による腐食はありませんか?
 池田 中央道では少し出ていますが、ポスTという形式が招いたというよりは当時のグラウトの問題です。ただ、大量に出ているわけではありません。
 ――地覆・高欄や下部工は
 池田 橋脚、橋台の両方で損傷が生じています。漏水が主要因です。それにともない、コンクリートがはく離したり、鉄筋の腐食を招いています。現在は地覆・高欄の変状は意外と少ないが、中央道では変状の多い縁石を撤去している例はあります。

伊勢湾岸道 名港西大橋でアルミ製検査路に交換

 ――伊勢湾岸道の塩害はあまりないのですか?
 池田 伊勢湾岸道としては10数年と新しいこともあるので、顕著な塩害はありません。鋼橋部分はすべて重防食で、コンクリート部もまだ顕著な塩害は生じていません。
 ――検査路も大丈夫ですか
 池田 検査路は錆が早いので、この前耐震補強を行った名港西大橋では、30年以上経過し変状もあったのでアルミ製検査路に切り替えました。


制震ダンパー(右写真)を点検する通路としてアルミ製の検査路を採用した

トンネル A判定は覆工が大多数 水が影響
 インバート対策は少数

 ――トンネルのA判定は覆工が87%を占めますね。これは矢板工法ですか
 池田 そうです。とくに古いものは覆工の損傷が多く出ています。水が回っており、欠けも割れも漏水も多い状況です。


トンネルの変状部位

 ――内圧によるひび割れは
 池田 内圧による変状はそれほどなくて、恵那山トンネルのように建設当時に苦労したところでは、10数年前にアンカーの増打ちをした記録はあります。管内のトンネルでは、特異な変状は多くありません。やはり圧倒的に漏水関係ですね。

 ――NATMでも継ぎ目の漏水が多くなっていますね。特に凍結融解を起こしやすい箇所にあるトンネルで多いようですが
 池田 NATMで漏水が発生している事例はあります。それはトンネル上の沢の水みちであったり、シートの内に水が溜まってしまい、想像もしないところから漏水をしている例もあります。水抜きをすれば抜けるし、早い段階で措置をすれば悪くはならないと考えます。
 ――インバートの盤ぶくれは
 池田 インバートによる影響はありません。大規模更新対象でインバートを施工すべきトンネルは何箇所かあるが少数です。管内で一番の課題は恵那山トンネルですが、多くの区間でインバートが入っているので、目で見える変状は出ていません。飛騨トンネルもあれだけもまれている山を抜くために施工時に相当苦労して対策されており、変状は生じていません。

 ――矢板の変状箇所は
 池田 コンクリート打設時の充填があまり良くない例があります。上半と下半の打ち継ぎ目は、当時逆巻きで打っていますが、そこで後打ちで穴を塞いだコンクリートが取れることがありましたので、大きな剥落を防ぐために既に取っています。
 ――受樋も安全上、あまり設置したくないですよね
 池田 ただ、在来の古いトンネルは樋だらけのものもあります。
 ――点検対象としては大変ですね
 池田 大変です。名神のトンネルは樋がたくさんついていますが、昔の樹脂製の樋は、それ自身が劣化しています。

土工 A判定はのり面が55%
 新しい盛土は気を付ける必要あり

 ――土工は
 池田 A判定はのり面が55%となっているが、特異な変状が多いわけではありません。


土工部の変状種別割合

 ――盛土の劣化は。構造的に手を加えないといけないところは
 池田 盛土は古いところは落ち着いていて、供用後10~20年の箇所で表面が少し沈下したりしています。10年以下の新しい盛土は気をつけないといけません。新名神でも鈴鹿トンネル前後では変状が出ているところがあり、対策しています。最終的にはフリーフレームで押さえ込みます。新東名は開通して数年ですが、本線外ののり面がけっこう損傷しています。新しい路線は排水系統の設計に余裕がありません。短時間強雨になると、余裕しろがないためオーバーフローして周りを崩したり、水路を流してしまう変状が出ています。


ふとんかごによる補修事例

落橋防止装置 未設置は310橋

 ――落橋防止装置取り付けの進捗状況は
 池田 耐震性能2を満足する耐震補強が必要な対象橋梁は約350橋が該当します。うち未設置は約310橋です。今年度は中央道のオーバーブリッジで2橋2箇所を予定しており、自治体管理のものを受託施工します。
 ――撤去する橋は
 池田 名神をまたぐ上石津跨道橋で撤去の調整をしています。

ロッキングピア 83橋全ての耐震設計を完了
 60橋を基本契約方式で発注 

 ――耐震補強の進捗状況は
 池田 力をいれているのはロッキングピアです。支社管内には83橋あり、平成31年までには終わらせるべく、昨年から基本契約方式で発注をしています。代表橋梁のみ設計して、それをもとにその1工事として発注し後続するその2工事の施工計画に受注者の知恵と工夫を取り込んで、その施工計画をもとに積算や発注図面をつくって、その2工事を出すやり方です。基本契約方式で発注したのは全部で60橋あります。


ロッキングピア対策例

 設計は83橋全てで完了しています。現在、その1工事がほぼ終わったところと施工中のところがあるが、計画をもとにその2工事を出す段取りをしている状態です。完全に終わっている橋梁はまだありません。
 ――斜角を有する橋などで基礎も補強する必要がある橋梁もありますか
 池田 83橋すべて設計すると、触りたくなくても基礎補強を必要とする橋はあります。そうした箇所はマイクロパイルを使って補強する計画です。本線橋で基礎補強を要する橋梁があります。
 ――ロッキングピア補強の基本的な対策方法は
 池田 基本的には上下部工を剛結して完全ラーメン化します。
 ――下に県道や市道がある橋はありますか
 池田 あります。一番大変なのは幹線国道を跨ぐ橋です。協議中で、何とか橋脚を増厚する分について合意をいただけました。
 ――83橋の路線内訳は
 池田 東名30橋、名神27橋、中央道20橋、伊勢道6橋です。未契約が23橋ありますが、手続き中です。
 ――3年で完了させるのは至難だと思いますが
 池田 厳しいが頑張っています。他と同じ時期に発注していては絶対に出来ないと考えましたので、昨年基本契約方式で代表橋梁だけ先に契約しました。

長大特殊橋は25橋が該当
 名港中央大橋、同東大橋などを設計中

 ――長大特殊橋の耐震補強状況は
 池田 管内に25橋あり、補強が完了したのは5橋です。伊勢湾岸道の名港西大橋と、中央道の日吉川橋、落合川橋の5橋です。現在、中央道の柳樽川橋が大規模更新事業に合わせて工事発注済みです。トラスで、桁補強がいろいろと出てくるので、床版と合わせて同じ業者がやったほうが、都合が良いと考えて発注しました。今後、トラス系は大規模更新と組み合わせて行っていきます。鋼斜張橋の耐震補強案件としては名港中央大橋と名港東大橋を設計中です。


長大・特殊橋の一覧と耐震補強の進捗状況

過年度に耐震補強を行った名港西大橋全景

橋軸直角方向(左)、橋軸方向(右)に設置した制震ダンパー/橋脚のせん断補強とアップリフト対策

 ――東名阪道の木曽川橋、揖斐長良川橋は昭和54年以前ですから補強の必要がありますね
 池田 施工空間が乏しいため、ゆっくりになるかもしれませんが、足踏みしないように1橋ずつ着実に進めるしかありません。


柳樽川橋

柳樽川橋の耐震補強計画概要図

 ――長寿命化修繕計画に基づいた対策は
 池田 経過年数が古い橋梁にⅢとⅡが集中的に多くなっています。年代別でみると、Ⅲは30年以上に集中していて、新しい橋梁にはありません。古いところをしっかりと補修していく必要あります。


橋梁の健全度評価

 ――30年以上に集中しているのは経年劣化や疲労の問題もあると思うが、初期欠陥に起因するものはありますか
 池田 それはないと思います。桁端から漏水した凍結防止剤に起因する塩害による損傷が圧倒的に多くを占めます。コンクリートの変状としては剥離がひどい状況です。


床版の損傷状況

鋼桁端部の損傷事例①(多治見管内 戸狩高架橋桁端部

鋼桁端部の損傷事例② 桑名管内 蟹江第1高架橋G1桁端部/多治見高架橋RC桁端部

 鋼橋では、漏水でやられて孔食が生じているものもあります。昭和39年道示で設計された床版など、設計年次が古く薄い床版が貫通ひび割れを起こして、そこからの漏水により腐食している鋼部材も見受けられます。

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