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インタビュー詳細

大規模リニューアル ロッキングピア対策 特殊橋の耐震補強など

中日本高速道路の構造物の保全はどこまで進んでいるか

中日本高速道路株式会社
前 取締役常務執行役員 保全企画本部長
(現 中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
   代表取締役社長)
猪熊 康夫 氏

 中日本高速道路は、東名、新東名、中央道、北陸道などといった、東西の大動脈を所管している。特に東名、名神、中央道は供用年次が古く、疲労、飛来塩分あるいは凍結防止剤による塩害、北陸道でも飛来塩分、凍結防止剤による塩害、骨材由来によるASR損傷など、様々な劣化が顕在化している。そうした状況に対し、大規模更新・大規模修繕によってどのように手当てしていくのかを猪熊康夫取締役常務執行役員保全企画本部長(6月12日取材時)に聞いた。さらには熊本地震を受けて取り組むロッキングピアや長大・特殊橋などの耐震補強の進捗についても詳述していただいた。(井手迫瑞樹)


供用年数 名神は50年超、東名も50年を迎える

 平均交通量は1日4万台、大型車も同9千台

 ――まず、中日本高速道路の道路網の現状と概要について述べてください

 猪熊常務 営業延長は2,077kmでNEXCO東西と比較すると若干短くなっています。利用台数は194万台/日、料金収入は東西とほぼ同じくらいで6,786億円(2017年度実績)です。平均的な交通量は約40,000台/日、大型車は平均約9,000台であり、東西の2倍近い値を示しています。

NEXCO中日本の営業路線(同社提供、以下注釈無きは同)

 個別の路線では、名神が開通から50年が経過し、東名も今年50年を迎え、SA/PAでイベントを行う予定です。中央道、北陸道も30年を超えていて、全体平均は31年に達しています。東西と比べても経過年数は長く、交通量も多く、場所によっては塩害もあり、構造物に与える影響は非常に厳しい状況といえます。

路線別構造数

路線別供用経過年数

 そうした中、2012年12月2日に笹子トンネル天井板落下事故が起こり、「安全性向上3カ年計画」を2013年から開始しました。計画した3カ年が経過した後も引き続き安全性を高めるため、中日本では安全性向上の5つの取り組みを続けています。「安全性を最優先とする企業文化の構築」、「構造物の経年劣化や潜在的リスクに対応した業務プロセスの見直し」、「安全管理体制の確立」、「体系化された安全教育を含む人材育成」、着実かつ効率的な事業推進に基づいて、点検と補修を行っていく「安全性向上に向けた事業計画」です。事故が起きた時、私は名古屋支社長でした。管内に恵那山トンネルに片側だけ天井板がついていて、その対策を計画して、2013年6月に実施する道筋をつけました。事故から去年の12月で5年が経っていますが、風化させずに安全性を強化していく必要があります。


5,693橋の橋梁・高架を管理

 鋼橋、PC橋、RC橋が約3割ずつを占める

 ――管内の橋梁内訳は

 猪熊 当社は全部で5,693橋の橋梁・高架を管理しています。橋種別は鋼橋、PC橋、RC橋がそれぞれ約3割を占めます。橋梁延長比は鋼橋が多く45%に達します。橋梁連数別の経過年数では41~50年の鋼橋が多いですが、橋梁延長別では41~50年と10年以内、11~20年が4分の1程度ずつを占めています。

橋種別割合/経年別割合(クリックして拡大してください)

 ――JRの中央本線からは中央道の橋梁・高架が横に見えます。長大鋼橋では塗装の劣化がやはりかなり進んでいるように見受けられます。形式もトラスなどの特殊橋梁が多く存在します

 猪熊 建設当時は、長い橋梁においてディビダーク工法による(PC桁の)架設ができませんでした。必然的に長支間の橋梁は鋼トラスが多用されています。

路線別橋梁連数

 ――部材が現在と比較すると細いので、塗替えをきちんと行わないとすぐに構造的に傷むと感じました

 猪熊 大規模更新で一緒に塗替えができるものはなるべく行っていく予定です。


全体で412本のトンネルを管理

 約3割が矢板工法を採用

 ――トンネルは

 猪熊 全体で412本を管理しています。古い路線が多いので約3割が矢板工法となっています。NATMは80年からで全面的に採用され始めたのが84~85年以降です。とりわけ北陸道はNATM開始前の建設なので、ほとんど矢板工法となっています。中央道西宮線(大月~小牧。資料は名神まで入っている)も矢板がほとんどを占めます。

 ――トンネルは41年以上が15%で比較的新しいですね

 猪熊 昔は長大トンネルを掘る技術がなかったため、トンネル建設を避けていました。

トンネル 工種別割合/経年別割合(クリックして拡大してください)

トンネル 路線別本数


橋梁は診断結果Ⅲが13%、Ⅱが81%

 トンネルは同Ⅲが27%

 ――構造物の点検実施状況は

 猪熊 平成26年度から5カ年での構造物点検を行っており、今年度中には全数の点検を完了する予定です。

 ――点検を進めてみての損傷状況は

 猪熊 平成28年度末の点検進捗率は橋梁が52%、トンネルが57%となっています。

点検実施状況(平成26~28年度)/構造物ごとの健全度状況

 ――橋梁は診断結果Ⅲが13%、Ⅱが81%ですがこれをどう見ますか

 猪熊 診断結果Ⅲは、「構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態」とされているものですので、まずは13%について優先して対応します。

 ――トンネルはⅢが27%もあります

 猪熊 橋梁とトンネルでは母数が10倍以上違います。橋梁の方が補修すべきものは多くなっています。

 ――道路付属物などは何を指し、どの程度ありますか

 猪熊 門型標識等1,517基やシェッドや大型カルバートを960基、横断歩道橋16橋が該当します。平成28年度末までに1,404箇所の点検を終えており、診断結果Ⅱが44%、Ⅲは3%となっています。


供用後31年以上になるとⅢの割合が増える傾向

 11~15%が違反車両、疲労を促進

 ――建設経過年数と判定区分の相関関係はありますか

 猪熊 供用後31年以上になるとⅢの割合が上がる傾向です。

判定区分と建設経過年度(道路橋)

 ――その要因は

 猪熊 時代によって多少施工や材料が良かったりするという特殊要因もあります。それとは別に年数を経ての経年劣化や大型車の繰り返し荷重による疲労の進捗、飛来塩分や凍結防止剤に含まれる塩分の浸透など、31年以上ぐらいからリスクが多くなることが推察されます。アメリカで起きている落橋は40年以上のものです。40年は節目なのかもしれません。

 ――トンネルは供用後31年を超えてからの損傷がグラフ上顕著ですね

 猪熊 NATMが本格化したのが約35年前ですから、その前に在来矢板工法で施工したトンネルの損傷が多いといえます。インバートの未施工や盤ぶくれ対策も同様です。

判定区分と建設経過年度(トンネル)

 ――NATMに全面移行している年代でも、Ⅲが15%~20%となっていますね

 猪熊 初期欠陥が考えられます。NATMなので基本は防水工を行っているので、水は回らないはずなのですが、材料劣化か施工時の不良(傷つけ)なのでしょう。だいたいが水みちに損傷が発生しています。防水層の継ぎ目(目地)の問題です。

 ――修繕工事の着手状況は

 猪熊 平成28年度末の状況ですが、橋梁については診断結果Ⅲ判定232橋のうち、32橋、トンネルは同40箇所中2箇所、橋梁付属物は同26箇所中7箇所の修繕にそれぞれ着手しています。

構造物ごとの修繕着手状況

 ――疲労の影響は

 猪熊 基本的には大型車の軸重繰り返しの影響は大きいですね。ダメージの大きさは重量の3乗に比例します。とりわけ大型車取締台数の11~15%が総重量を超過している違反車両となっています。点数制度で違反が増えれば割引停止を行い、これまでは検問所やIC入口で計測していた取締について、本線での自動計測を始めるなど、重量違反車両対策を強化しているところです。

車両制限令違反車両取締状況


 軸重の累積路線図を見ると傾向は顕著です。少し古い図ですが、平成23年度時点で東名、名神、東名阪、中央道の一部がすでに累積10t換算軸重3,000万軸を超えています。10年後には伊勢湾岸道、中央道の一部が新たに累積10t換算軸重3,000万軸を超えます。

累積10t換算軸重3,000万軸を超えている路線(赤線部)


 これに伴い、RC床版の疲労損傷や鋼部材の疲労亀裂も顕在化しています。

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