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インタビュー詳細

特に強調しているのは水

「道路橋床版の長寿命化技術」を発刊

大阪大学名誉教授
大阪工業大学客員教授
松井 繁之 氏

 このほど、大阪大学名誉教授で大阪工業大学客員教授でもある松井繁之氏が中心となって編集した「道路橋床版の長寿命化技術」が森北出版から発刊された。前著「道路橋床版」の維持管理版ともいうべき著書で、松井氏が委員長を務める(一財)災害科学研究所社会基盤維持管理研究会のメンバーが中心となって編集されたものだ。その内容と狙いについて、松井氏に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)


道路橋床版の長寿命化技術


道路橋床版の技術曼陀羅図

 いずれも一家言有する16人の技術者が関与

 ――内容と狙いから

 松井氏 道路橋床版をめぐる維持管理の必要性は、NEXCO3社の大規模更新、大規模修繕を筆頭に顕著になっています。床版は小さな載荷面積で大きな輪荷重が作用し、かつ、その輪荷重が走り抜けることによって、床版コンクリートのひび割れの進行に伴う疲労劣化現象が誘発されています。さらに雨水や塩化物の浸入、浸入した水分の凍結融解作用によって劣化が加速されます。そして時には中性化やアルカリシリカ反応による材料的な問題も誘発しています。

 こうした状況を踏まえて、床版の耐久性を抜本的に上げなければいけない、ということをずっと思っていました.

 各種論文などで断片的にはそうした内容が書かれているものもありますが、本として改良点や手法をまとめたものはありませんでした。現在、各発注機関において進められている長寿命化修繕計画の情報は、それが始まる4、5年前から(そうしたことが始まりそうだ)ということを予想していましたので、抜本的な床版の維持管理に向けての参考書を作る必要があると感じていました。既に(前著である)「道路橋床版」で床版劣化の機構の内容について書いていましたが、過去の様々な経験をベースにして、抜本的な長寿命化方策を考えておりました。そのことを災害科学研究所内にある社会基盤維持管理研究会で議論した結果、本を書くことの賛同を得たわけです。内容的には構造物および床版に関して、床版の劣化、あるいは床版の構造に関して各劣化因子とどのような関係にあるのかを深掘りしてみました。

 それが本の11Pにある道路橋床版の技術曼陀羅図(下図)です。


道路橋床版の技術曼陀羅図


舗装に出ている床版損傷の兆候/剥がしてみると……(写真はイメージです)

 道路橋床版を中心にして、主要な変数があるわけです。それは設計、材料、施工、維持管理、構造、荷重、環境、立地条件が絡んでおり、なおかつこの8項目に関して二次的な影響因子があり、さらにその上には舗装、高欄、あるいは主桁などの他の部材の影響があり、床版自身が強くても上の高欄や舗装、地覆、伸縮継手の仕舞(防水、止水、排水)が悪かったとしたら、やはり床版にも影響を及ぼすし、あるいは床版からほかの部材に影響を及ぼします。その最たるものは、主桁端部の腐食でしょう。床版を守るということは、ひいては道路橋全体に好影響を与えることと同義です。そのためにも系統だった手順で長寿命化に向けての技術革新を促すべく本を書こう、その本を読んでいただいた技術者が良い設計、施工、維持管理をしてくれると共に、切な適材料選定をして欲しいと考えています。社会基盤維持管理研究会などから、私を含めて16人のメンバーを選びました。そのメンバーは構造、材料、設計の専門家、研究者など多岐にわたります。なおかつそれぞれの人たちは一家言を持っている人を選びました。要となる幹事長は「道路橋床版」で編集幹事を務めてもらった石崎茂氏(富士技建取締役)に引き受けてもらいました。


水を制御していくことが重要

 ――具体的な構成は

 松井 第1章「序論」、第2章「疲労耐久性向上のための構造改良」、第3章「床版長寿命化のための水の制御」、第4章「床版材料に関する長寿命化技術」、第5章「PC床版の高性能化と長寿命化」、第6章「合成床版の構造改良と適用事例」、第7章「既設床版の補修技術」、第8章「床版取替え工法」、第9章「橋梁長寿命化のための桁端部の構造改良」となっています。


床版防水の施工

 特に強調しているのは水です。床版に限らず橋梁の劣化は水を媒介にしたものが多く、水を制御していくことが重要です。そこに力を入れて解説しています。設計~維持管理に至る各段階において、防水システムだけでなく、高欄の目地や、地覆の細部の処理の仕方なども記述しています。そういう細かい記載は、既存の論文や報告書の類にはなく、個々のコンサルタントの業務報告等にわずかに描かれているのみです。その根本をこの本では書いています。

 具体的には、床版面への滞水防止対策、床版防水システム、橋面舗装における技術開発、排水設備の構造改良、コンクリート打継目の止水対策について、などです。