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支柱、桁発注を急ピッチで進め構造物は29年度の完成目指す

沖縄都市モノレール 平成31年度早期に開業へ

沖縄県
土木建築部
都市計画・モノレール課
都市モノレール室長

喜屋武 元秀

公開日:2016.07.07

溶融亜鉛めっき防食ボルトを採用
 フライアッシュコンクリートを導入

 ――防食面で新しい材料などの採用は
 喜屋武 基本的には沖縄地区鋼橋塗装マニュアルに基づいた塗装仕様を踏襲していきます。但し、技術検討委員会の中で防食の新しい試みを始めています。具体的には添設部のボルトです。従来は通常の塗装された高力ボルトを使う予定でしたが、延伸線では溶融亜鉛めっきで防食された高力ボルトを使用します。また、PC桁のコンクリートにはフライアッシュを混入したコンクリートを採用します。フライアッシュは電源開発の石川発電所から産出されるものを使用しています・
 モノレール桁は外寸が決まっているため、鉄筋の配置が密であり、施工性が重要になってきます。既存区間でも高強度コンクリートを採用していましたが、今回の現場では流動性が高いフライアッシュ混入コンクリートを採用したものです。
 ――エポキシ樹脂被覆塗装鉄筋の採用は
 喜屋武 今回は内陸部のため使用する予定はありません。
 ――NATM部分について技術的課題は
 喜屋武 土被りが薄い(最も土被りが浅い個所は約2.3㍍、平均では約4.5㍍)区間もあるため、補助工法を使うことを念頭においています。

鋼製部材で錆の発生を確認

 ――次に保全について概要から
 喜屋武 既存区間の構造物内訳ですが、県管理区間の支柱は381基あり、RCが310基、鋼製が71基となっています。また軌道桁は761本あり、PC桁が678本、鋼桁が83本となっています。平成15年8月の開業以来、多くの県民や観光客の皆様にご利用していただくとともに、交通渋滞の緩和にも寄与しています。既存区間は国・県・市の管理区間に分かれており、県の管理区間につきましては、整備の段階から厳しい精度管理と入念な施工管理を実施しています。


錆の発生している個所

 ――点検を進めて見て健全度をどのように判断していますか
 喜屋武 供用年数も通常の道路橋と比べると若いため、平成23年度に行った定期点検でもコンクリート部材(PC、RC製)に関しては健全な状態が確認されました。一方で鋼部材に関しては桁の添接部について錆の発生が確認されています。持管理については、き電停止から始発までの夜間施工あるいは交通量の多い道路に平行しての作業といった非常に厳しい制約条件下にあると考えています。
 また、モノレールの維持管理コストの平準化と安全管理の両立を目的として、平成23年に長寿命化修繕計画を策定しておりまして、その計画に基づいて各種予防保全を行っています。
 ――長寿命化修繕計画の進捗状況は
 喜屋武 鋼軌道桁の塗装塗り替えを中心に行っています。また、昨年度の点検で鋼製支柱の1基に異常が確認されたため対策工事を行いました。

鋼製T型支柱で亀裂
 化粧用カバープレートの亀裂が母材まで進展

 ――具体的にはどのような損傷ですか
 喜屋武 鋼製T型支柱に亀裂が生じていたため、当て板補強を行いました。亀裂の原因ですが、委員会(委員長=下里哲弘・琉球大学准教授)を立ち上げて究明しています。梁下のR部分のフィレットなどを隠すために化粧用のカバープレートを設けていたのですが、そのカバープレートと支柱本体の接合部分に亀裂が入り、母材まで進展していったという可能性が高いと考えています。化粧用のカバープレートは構造部材としてもちろん計算していませんが、これがモノレールの移動によって生じる振幅により疲労~亀裂が生じ、本体構造物にも進展していったようです。延長区間ではこうしたカバープレートは設けていません。


当て板補強前(左)/当て板補強後(右)

 ――今年度の保全工事予定は
 喜屋武 おもろまち駅舎の塗替えなどを行う予定です。塗替えは1 3種ケレンを用いて行います。
 ――コンクリート桁の塩害やASRの発生は
 喜屋武 塩害は今のところ見受けられません。ASRについても骨材産地の制限などを全県的に行っており、損傷は出ていません。
 ――保全において新技術の適用は。モノレールは構造部材もさることながら走行性も床面の平滑(不陸の防止)には意を砕いていると思いますが
 喜屋武 広義になると思いますが、そういう意味では鋼桁上の合成桁構造(コンクリート床版)がそれに該当すると考えます。既設区間の鋼桁は鋼製軌道の上に滑り止めの舗装を行っていましたが、今回はコンクリート床版にすることでそうした手間や舗装の打ち替えを無くすことができるようになりました。
 ――ありがとうございました
(2016年7月7日掲載)

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