道路構造物ジャーナルNET

フライアッシュ、エポキシ樹脂被覆など手厚い塩害対策

NEXCO西日本四国支社  吉野川大橋に着手

西日本高速道路
四国支社 建設事業部長
(取材当時、5月30日に本社技術本部安全管理担当部長)

松室 圭介

公開日:2016.06.27

四国横断道 吉野川大橋含め4橋を予定
 津波一時避難場所を7箇所で整備へ

 ――次に四国横断道の詳細を教えてください
 松室 徳島東IC(仮称)~徳島JCT(仮称)間は、高松道・徳島道および新直轄方式で整備されている阿南~徳島東IC(仮称)間を結ぶ延長4.7㌔の事業です。工事着手率は50%を超えており、今後も用地買収を進めながら、随意工事発注を行っていきます。四国横断道の整備により、四国東部における広域ネットワークが整備されることで地域間交流の強化、沿線道路の渋滞緩和、災害時の代替機能の強化など地域の発展が期待されています。また、今後予想される南海トラフ地震による津波発生時において、緊急輸送道路としての機能を担うことで安定した通行の確保も期待されます。沿線自治体と連携し、高速道路と一体となった津波一時避難場所を整備(7か所)することで、地域の防災力向上も図っています。
 構造物比率は土工が2.9㌔(61.7%)、橋梁が1.8㌔(38.3%)でトンネルはありません。区間内には吉野川大橋をはじめとして4橋の橋梁を予定しています。
 ――同地の地盤条件や施工条件など注意しなければならない点を教えてください。同地は軟弱地盤があったように記憶していますが
 松室 仰る通り、徳島平野の沿岸部では干拓地や埋立地が分布しているなど、地表面から40㍍程度の深さまで軟弱な沖積層が広がっています。このため橋梁の基礎杭が比較的長くなる特徴があります。また、盛土施工や構造物による地盤の沈下が懸念される地域であるため、有識者による意見も踏まえたうえで、軟弱地盤対策を検討しながら事業を行っています。加えてボーリング調査を慎重に行い、実施工時に沈下などの問題ができないようにしていきたいと考えています。
 吉野川河口部においては、多種多様な希少生物が生息し、渡り鳥のシギやチドリが飛来する重要な湿原があります。このような自然豊かな吉野川渡河部に橋梁を建設することから、環境保全にあたり専門家から必要な指導を得るために「四国横断自動車道 吉野川渡河部の環境保全に関する検討会」を設置し、他事業における環境保全対策を参考に、関係機関と調整を図りながら環境保全と事業の両立に向けて全力で取り組んでいきます。

浚渫量を最小限に抑えるためPCラーメン箱桁を採用
 鋼橋では台船架設しか選択肢なく、浚渫量は増加してしまう

 ――吉野川大橋について形式を教えてください。吉野川大橋、阿波しらさぎ大橋が鋼橋を採用した中でPC橋を採用した理由も教えてください
 松室 まず橋長および形式は、1695.3㍍のPC15径間連続ラーメン箱桁橋(幅員10㍍)を採用しました。先にお話ししました通り、架橋地には広く干潟が形成されており底生生物の保護を図るため浚渫量は最小限に抑制する必要があります。
 鋼橋でなくPC橋を採用した理由も浚渫量を最小限に抑えることが理由です。最大スパンはPC箱桁が130㍍、鋼箱桁が200㍍、下部工施工時においては本数を少なくできる鋼橋が有利なのですが、上部工に目を移すと鋼橋ではこの距離を送り出し架設することはできません。台船架設によるしかないのですが、干潟が形成されている箇所は2㍍程度の水深であり、台船では大規模な事前浚渫の必要があります。そこで橋脚数は多くなりますが、上部工の張り出し架設が可能なPCラーメン箱桁方式を採用しました。
 ――鋼吊橋や鋼斜張橋形式、PCエクストラドーズドで思い切って飛ばすことは難しかったのですか
 松室 これは、吊材やケーブルを有する下路橋では、シギやチドリなどが衝突してしまう危険性があるという環境団体からのご指摘があったため、難しいと判断しました。


阿波しらさぎ大橋(徳島県管理)はケーブルイグレットで飛ばしたが

吉野川大橋 フライアッシュコンクリートを採用
 エポキシ樹脂塗装鉄筋、被覆PC鋼材も用いる

 ――技術的な特徴は
 松室 内・外ケーブルの採用と高強度材料を使用することにより、上部工、下部工、基礎工の規模縮小に努めています。同地はほぼ海に面していることから、塩害に対して、高い耐久性を確保しなくてはいけません。そのため基本設計ではエポキシ樹脂塗装鉄筋および、被覆PC鋼材などを採用しています。なお桁位置は大規模地震時の津波も十分考慮して海面から15~16㍍の高さに設定しています(橋脚高は水面中も含め河床から25~26㍍程度)。また、コンクリートはフライアッシュコンクリートを採用します。
 下部工3基を先行発注し、それは東亜建設工業が施工中です。また、それを除く上下部工一式を先頃、詳細設計付で発注し、鹿島・三井住友・東洋JVが受注しました。


吉野川大橋右岸部の橋脚基礎施工(遠くに見えるのは左岸部の橋脚基礎施工)

吉野川大橋左岸部の橋脚基礎施工

 ――NEXCOでフライアッシュは珍しいですね。御社も含めNEXCO3社は従来高炉スラグを多用していたように記憶していますが
 松室 四国では、土木工事においてフライアッシュを一般的に採用しています。これは四国電力橘火力発電所から出るJIS灰の性質が良く、高耐久かつ高強度なコンクリートが安定的に打設できる、と期待できるためです。徳島では、生コンプラントによっては常時フライアッシュコンクリートを作成している所もあり、地域的な汎用性も採用決定の助けになりました。緻密で密実で塩害に強いコンクリートが形成されますし、ポゾラン反応により設計強度よりもさらに高強度なコンクリートが期待できます。
 ――鉄筋・PC鋼より線はエポキシ樹脂被覆タイプということですが、デュラブリッジ(アラミド成型品を用いたFRP筋、FRP製ロッドを用いたPC橋梁形式)の要素技術を採用することは考えないのですか
 松室 詳細設計付発注ですので、技術的、コスト的に良いと判断すれば使う可能性もあると思います。

河川内橋脚は剛結構造
 景観を考慮した配慮や半壁高欄の採用を検討

 ――耐震性や景観への配慮は
 松室 耐震性については、約1.7㌔の橋長全てを連続化するとともに、河川内橋脚部分については剛結化することで、向上させています。また、景観面は、検査路や排水管が外に見えないような配慮や、半壁高欄の採用などを予定しています。 



吉野川大橋完成予想図(上:左岸上流側、下:左岸下流側)

陸上部は回転鋼管杭、河川部は鋼管矢板ウエル基礎
 基礎径は最大でも17㍍弱のコンパクト形状に

 ――工事の上で気をつけることは
 松室 河川内の基礎工は、基本的に作業台船によって施工する予定です。基礎の深さは40~50㍍に達します。基礎形式は陸上部を回転鋼管杭、河川部を鋼管矢板ウエル基礎で製作します。河川部の基礎径は14㍍強から最大でも17㍍弱のコンパクトな形状にする予定です。施工にあたってはシールドフェンスを設置するなど油や濁水を出さないよう、またpH値にも影響が出ないように気を付けて施工していく予定です。
 上部工架設は、河川内の浚渫を極力使用しない架設工法として、現段階では補助桁併用張り出し架設を予定していますが、更なる施工期間の短縮を図るためと環境への影響をさらに軽減できる工法について検討中です。上部工は最大でワーゲン8台を使用する予定です。
 ――現在は
 松室 平成31年度内の供用を目標に、昨年11月から現場工事に着手しました。現在は河川内の橋脚工を進めています。

極力ジョイント数を減らす
 ラーメン構造を積極採用

 ――長期耐久性確保の工夫などは
 松室 金属溶射の採用、フライアッシュコンクリートの適用に加え、延長床版の採用を4車線化区間の橋梁で積極的に進めています。ねらいは桁端部における伸縮装置から発生する騒音・振動の軽減および、伸縮装置からの漏水対策です。なお伸縮装置・床版防水についてもNEXCO基準に基づき、高い耐久性を有する材料を使用します。
 また、支承及び伸縮装置を減らすことによる走行性、維持管理性の向上を図るため、PC橋、鋼橋ともラーメン構造を積極的に採用します。
 加えて、極力ジョイント数を減らすことで建設費や維持管理コストの縮減に努めています。例えば支間割の関係で鋼橋とPC橋が混在する橋梁でも、鋼・PCを連続化した混合橋を採用しています。また、下部工がⅠ期線施工時に完了しており、連続化が困難な橋梁については、床版連結構造としています。
 ――今後の課題について
 松室 四車線化は平成30年度、徳島道は平成31年度を供用目標にしており、工期は非常にタイトです。そうした中で、着実に施工し、目標年度内供用を果たしていきたいと考えています。
 ――ありがとうございました

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