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そのうち6割が橋梁老朽化対策

NEXCO東日本 大規模更新・大規模修繕は総額8800億円程度

東日本高速道路株式会社
取締役兼常務執行役員 管理事業本部長

山内 泰次

公開日:2016.05.19

  東日本高速道路の大規模更新・大規模修繕事業予算は総額8,800億円に達する。これを15年換算した場合、年平均600億円程度の執行が必要になる。更新事業の約6割は橋梁の老朽化対策が占める。それに対して、同社がどのような体制、契約方式を駆使し臨もうとしているのか。また、施工会社や各材料メーカーにどのような手法を求めているのか。山内泰次・取締役兼常務管理事業本部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――まず東日本高速道路の大規模更新・大規模修繕事業の概要から
 山内常務 NEXCO東日本は橋梁の桁や床版を更新するいわゆる大規模更新事業に約3,900億円、高性能床版防水の実施や床版補修・補強、トンネルの補修や法面の補修といった大規模修繕事業に約4,900億円、合計約8,800億円を費やし、約15年間かけて高速道路のリニューアルを進めていきます。

 ――大規模更新・大規模修繕を行うにあたって損傷原因はどのようなものがあると考えていますか
 山内  NEXCO東日本の更新事業のうち約6割は、橋梁の老朽化対策に関するもので、床版や桁の取替え、ならびに高性能床版防水などの予防保全もしくは補修になります。
 ここで、橋梁の変状に対して大きな影響を与えると推測される要因は、供用後の経過年数の影響、交通量・飛来塩分量・凍結防止剤散布量などの供用環境の影響、荷重・応力度・構造・材料・施工方法などの設計・施工時の基準やその後の基準の変遷による影響などが考えられます。エリア的には、主に東北や北海道などの寒冷地では凍害や、凍結防止剤使用による塩害、首都圏近傍では大型車交通量、日本海沿岸では飛来塩分による塩害などが主要因であると考えられます。
 ――平成27年度の事業実施状況と28年度の事業実施計画について
 山内 27年度は橋梁の床版取替工事11橋、高性能床版防水工事68橋などの発注手続きを実施ししてきており、28年度は新たに床版取替工事約20橋、高性能床版防水工事約20橋などの工事着手に向けて取り組んでいきます。4月1日に出した発注見通し(床版取替工事3件、高性能床版防水工事4件、トンネル補強工事など5件、計12件)は今年度発注を予定しているものの一部です。昨年度は16件大規模更新・大規模修繕事業に該当する工事の発注公告を行いましたが、この内契約まで進んだのは4件にとどまっています。残りの11件は28年度に契約すべく手続を進めています。 


広瀬川橋の全景(左)および床版裏面の鉄筋露出(右)

小仁熊橋の全景(左)および床版裏面の損傷(右)

大野橋のひび割れ写真

中山橋の全景(左)および損傷写真(右)


 28年度は具体的に東北自動車道の中山橋(仙台宮城IC~泉IC間)および長野自動車道の小仁熊橋(安曇野IC~麻積IC間)の床版取替工事を実施する予定です。また、発注手続きを進めている札樽自動車道の大野橋(朝里IC~銭函IC間)、東北自動車道の広瀬川橋(仙台宮城IC~泉IC間)などの橋梁については、詳細設計の後、現地着手へと進めていきます(左表が4橋の概要)。大規模更新事業については今年度発注しても年度内に現地の工事着手できるものはほとんどありません。どうしても詳細設計してから工事ということになりますので、時間がかかるのです。中山橋や小仁熊橋の床版取替については、以前から計画していたもので、昨年度、大規模更新・大規模修繕事業の枠外の工事として実施しています。中山橋の工事は下り線は施工しており、現在事業着手しているのは上り線の部分です。警察などとの協議もあり、床版取替工事を主とする大規模更新事業が実際に現場で本格的に動き出すのは来年度以降になるかと思います。大規模修繕事業については年度内に施工するものが多くなります(例えば高機能床版防水は68橋中35橋66,000平方㍍の発注を完了している)。


高性能床版防水橋の対象橋梁

 ――27年度、28年度は大規模更新・大規模修繕にどのくらいの予算を投じた(る)のですか
 山内 27年度は16件で約100億円の工事公告を行いましたが、28年度はその倍以上になるかと思います。

大規模更新・大規模修繕事業の推進 4分科会を本社に設置
 支社にも対応する組織設ける

 ――8,800億円を15年間で投資するには、年平均600億円の執行が必要ですが
 山内 仰る通りです。数年後には大きな山が来て、しかもそれがしばらく続くことになります。現在はそれも含めて全体計画を検討している状況です。具体的には社内に特定更新等事業推進会議(委員長は山内常務)を27年4月に設置し、27年度内に3回の推進会議を開催してきました。この推進会議のもとに、計画調整、事業調整、技術基準・開発、技術管理の4分科会を本社に設置し、支社にも対応する組織を設けて、高速道路機構やNEXCO西日本・中日本などとも連携しながら検討を進めています。
 計画調整、事業調整の2分科会では、中期および各年度の事業計画の策定、広報戦略の検討、社内外の連携体制の構築などを実施してまいりました。また、技術基準・開発、技術管理の2分科会では試験施工の実施、新たな契約制度に関する検討を実施しています。
 さらに平成26年度から本社と各支社に構造技術課を新設しました。ここが橋梁の大規模更新や大規模修繕を主に担うセクションになります。それから具体的な案件が始まっている箇所については、状況に応じて人員を配置していますし、組織的な増強も出てくると思います。難しいのはこの事業計画は我々だけでは決められないということです。供用中の道路で施工するため、当然ですが警察や一般道路や鉄道との交差個所では道路や鉄道の管理者との事前協議が必要になってきます。長期にわたる年度ごとの事業規模を明確にできないのもそのような理由があるからです。

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